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社説・コラム

[ザ☆定番!] 旅行の友(田中食品) 1世紀旅した食卓の友

 小魚としょうゆの味が口に広がる食卓の名脇役。1901(明治34)年創業のふりかけメーカー田中食品(広島市西区)が誇るヒット商品だ。大正に入り保存食として旧海軍向けに開発し、16年に一般発売。100年を超えて国内外で売れ続けている。

 創業者の田中保太郎さん(1882~1945年)は呉市で漬物やつくだ煮を製造、販売していた。だしに使われる小魚をヒントに乾燥した魚粉を味付けした最初のふりかけは、栄養補給の色合いが強かった。孫の田中茂樹社長は「子が戦地にいる親の気持ちに寄り添い、少しでも栄養価の高い食べ物を届けようとした」と思いをはせる。

 やがて旅行の「お供」として一般の市場に根付いた。魚の風味をベースにした味が1世紀余り支持されるのは、煮魚や焼き魚になじんだ日本人の味覚に合うからと同社は分析する。

 商品名の「友」には保太郎さんの妻トモさん(1888~1945年)への感謝もにじむ。9人の子育てをしながら旅館を経営して人脈を築き、売り先を広げた立役者だった。

 包装には赤、緑、黄のカラフルな切符を頭にのせたキャラクターが描かれている。世界的に活躍したデザイナー故大智浩氏が54年に手掛けた。田中社長は「70年近く変わらないのはデザイナーの力量の証し。中身も見た目も一流であり続けたい」と誓う。(森岡恭子)

 ≪メモ≫魚粉とゴマ、ノリ、卵を主な原料とし、1食分(約2・5グラム)に牛乳40㏄分の豊富なカルシウムを含む。缶入り容器で発売し、1954年に湿気対策で袋入りへ。75年には1食分に小分けしたミニパックも登場した。2010年には広島市の「ザ・広島ブランド」に認定された。23グラム入り140円。

(2022年4月14日朝刊掲載)

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