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社説・コラム

ひろしま通訳・ガイド協会30年 古谷章子前会長に聞く 日米交流への貢献 出発点に

 ひろしま通訳・ガイド協会(HIGA、広島市中区)が1992年の設立から30年を迎える。会員は通訳案内士たち約230人で、英語、中国語など8言語のニーズに対応する。世界各国から被爆地を訪れる人たちに頼られる存在だ。3月で会長を退任した古谷章子顧問に、これまでの歩みと現状を聞いた。(金崎由美)

  ―30年前はどのような状況だったのでしょうか。
 2年後に広島アジア大会を控え、大勢の大会関係者や観光客の来訪が見込まれていた。3人の同志とともに準備を進め、会員42人で協会を発足させた。

 この3人は、米国ハワイ生まれの被爆者で医師の故嘉屋文子さんが設立した「嘉屋日米交流基金」の活動を支援する仲間でもあった。2006年まで14年間、ハワイから奨学生を招いて平和研究の機会を提供した事業だ。広島は海外に最も多くの移民を送り出した県の一つ。戦争と原爆投下の歴史も経た日米間の平和と相互理解への貢献が、私たちの出発点といえる。

  ―案内する相手は、バスツアーの観光客や要人とその随行者たち。多様ですね。
 16年の先進7カ国(G7)外相会合など数々の機会が思い出される。とはいえ相手が誰であっても、もてなしの心と、その人が何を求めているのかを的確につかむことが大切であることに変わりはない。私たちの対応ぶりが、その人にとっての広島のイメージをつくると思っている。

  ―新型コロナウイルス禍でインバウンド(訪日外国人客)は激減しています。
 つらい時期は続くが、必要な知識の幅を広げる機会だと捉えている。広島の歴史や自然の良さを見つめ直すべく勉強会をオンラインで開くなど、会員のモチベーションは高い。新規入会も増えており心強い。

  ―今後の見通しは。
 来年、地元の誘致活動が実ってG7首脳会議の広島開催が実現すれば、25年の大阪万博と合わせて相当のインバウンド需要があるはず。ロシアのウクライナ侵攻を機に、被爆地への関心はさらに高まっている。後任の畝崎雅子会長を中心にしっかりと備えていく。私自身は30年前に立ち返り、若者の日米平和交流に貢献する活動なども続けたい。

 1948年、福山市生まれ。広島大卒。英語教師を経て通訳ガイドに。2014~22年、ひろしま通訳・ガイド協会会長。

(2022年4月18日朝刊掲載)

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