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那須正幹さん一周忌前に特集 機関誌 「日本児童文学」 ファンら魅力読み解く

 昨年7月に79歳で亡くなった児童文学作家、那須正幹さんの一周忌を前に、日本児童文学者協会(東京)が機関誌「日本児童文学」(3・4月号)=写真=で追悼特集を組んだ。ゆかりの作家や研究者、ファンたち約20人が、那須作品の魅力をあらためて読み解いた。

 現在の広島市西区己斐本町出身の那須さんは、1968年から児童文学を書き始め、72年に初の単行本「首なし地ぞうの宝」を出版。78年から2004年まで続いた「ズッコケ三人組」シリーズは、全50巻で累計発行部数2500万部に及ぶ。

 追悼集では冒頭、児童文学作家の牧野節子さん(72)、評論家の宮川健郎さん(66)、ファンクラブ会長を務めた飯塚宣明さん(54)がズッコケシリーズについて振り返る座談会を収録。等身大の小学生を描きながら「当時の世相が感じられる社会派」の一面や、「どこまでも読者を大切にしてくれた那須さんの誠実さが伝わる」点を指摘する。

 別の研究者ら5人が論考を寄せ、3歳で被爆した那須さんが一貫して反戦、反権力を貫いたことや、作品の中で日常とファンタジーの双方を扱った手法、読者がさまざまな体験をシミュレーションできる物語の特徴を解説した。ノートルダム清心女子大の村中李衣教授(63)は「子どもたちに、疑似体験だけで終わらず行動を起こす勇気を持つよう促してもいる」と語る。

 「絵で読む 広島の原爆」(1995年)でイラストを描いた西村繁男さん(75)をはじめ、那須作品の挿絵を手掛けた8人による絵手紙も掲載した。企画した奥山恵編集長(59)は、「那須さんの本は一見するとエンターテインメントだが戦争や震災、いじめなど、さまざまな社会問題を意識して描かれている。これからも広く読まれてほしい」と力を込める。(桑島美帆)

(2022年4月22日朝刊掲載)

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