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原爆症認定 骨子案 被団協側が批判 厚労省検討会 次回会合で最終案

 厚生労働省の原爆症認定制度の在り方に関する検討会は29日、省内で会合を開き、最終報告の骨子案について議論した。認定基準を病気ごとに細かく分けて明確化することを強調する骨子案を、日本被団協の委員が批判。骨子案は確定しなかったものの、座長の神野直彦・東京大名誉教授(財政学)は次回会合で最終報告案を出す方針を示した。(藤村潤平)

 第24回会議には委員全13人が出席。骨子案について、一橋大副学長の高橋滋委員たちが「行政認定と司法判断の隔たりを埋める有効な手段になる」と主張。「現行制度をより良いものにしていく」とする骨子案を支持した。

 これに対し、現行制度を廃止し新たな手当制度創設を求めてきた被団協事務局長の田中煕巳(てるみ)委員は「また訴訟になって国は負ける」と反論した。

 骨子案は、被団協委員の主張を紹介する一方、「認定範囲の緩和は慎重に考えるべきだ」などの意見を強調。集団訴訟で相次いだ国の敗訴を踏まえ、被爆距離などに基づいて病気ごとに細かく認定基準を設けることを中心に提言している。

 会合の最後に神野座長は、11月にも予定する次回会合で、骨子案を基にした最終報告案を提出する意向を示した。反対意見はなかった。

 田中委員は終了後に記者会見し、「骨子案にがくぜんとした。認定基準の明確化は対象を絞るだけで改善どころか改悪だ」と批判。被団協として反対意見を最終報告に明記するよう求めるとした。

 最終報告は、安倍晋三首相が8月、厚労省に年内にまとめるよう指示。最終報告を受けて安倍首相が制度見直しの在り方を判断する。

【解説】拡大に消極的 解決遠く

 厚生労働省の原爆症認定制度の在り方に関する検討会で示された最終報告の骨子案は、認定の幅を広げることに消極的な記述が目立つ。認定状況と司法判断の隔たりをなくすことを出発点とした検討会の議論は、認定基準の明確化など制度の手直しが中心となり、日本被団協が求める根本的な解決には程遠いのが現状だ。

 骨子案は、冒頭の基本的な考え方(総論)で「現行制度をより良いものにする」「司法判断と行政認定の乖離(かいり)をどう埋めていくか考える」との視点に立つとした。しかし、その後の各論では、被団協の提案や主張は一つの意見として紹介されるにとどまった。

 なぜ、こんな落差が生まれたのか。被団協や放射線防護関係を除く委員の多くは、社会保障や経済学、行政法などの専門家も占める。「他の戦争被害との区別や国民の理解が必要」とし、原爆放射線と病気の関連(放射線起因性)について、現在の知見を基にした合理性によらざるを得なかったからだ。

 2010年12月に設置された検討会。議論は、認定基準をめぐる従来の主張の対立を浮かび上がらせたにすぎず、その間、被爆者の高齢化はさらに進んだ。被爆者の思いに沿った形で見直しができるかどうかは政治決断に委ねられる。(藤村潤平)

(2013年10月30日朝刊掲載)

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