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社説・コラム

天風録 『名は体を表す?』

 政治家にちなんだ名はもう真っ平ごめんだ…。ドイツの動物園がロシア品種のイノシシに付けた「プーチン」の名を捨て去った。きっかけは、きのうで2カ月になったウクライナ侵攻。名付け親ですら、名を呼ぶと背筋に寒けが走るようになったためだ▲そもそも、非人間的な言動をする人物の名にふさわしいイノシシなんて存在するまい。代わりに付けられた名前は「エバーホーファー」。地元で人気の絵本に出てくる警察官にちなみ、来園者らによる投票で決まった▲こちらは名前だけでなく、中身も一新しようという魂胆のようだ。敵基地攻撃能力を反撃能力に言い換えるとした安保戦略の提言案である。自民党がまとめ、近く政府に出すという▲確かにロシアや中国の強引な振る舞いは目に余る。とはいえ、日本には専守防衛という大原則がある。危機に乗じて捨て去ってしまえば、ブレーキのない車のようになりかねない。周りにイエスマンばかり置いた権力者と同じぐらい危険ではないか▲猪突(ちょとつ)猛進の「プーチン号」が止まる気配は見られない。ブレーキ役となる国民は正確な情報を知らされていないようだ。日ごとに侵攻の犠牲者が増えるのは、もう真っ平だ。

(2022年4月25日朝刊掲載)

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