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社説・コラム

『この人』 ウクライナ支援のチャリティーコンサートを開く 平石英心(ひらいしえいしん)リチャードさん

 ウクライナ出身の母の祖国を救いたい一心で、広島県内各地を回り、チャリティーコンサートを開いている。ロシアのウクライナ侵攻以来、計9回公演し、500人以上が集まった。連日報道される戦地の痛ましい映像と重ね、涙ぐむ聴衆もいる。

 毎回、アンコールに弾くのはマスネの「タイスの瞑想(めいそう)曲」。感覚を研ぎ澄ませて愛器を奏でる時、脳裏に浮かぶのは、青空の下に広がるヒマワリ畑だ。幼い頃から毎年のように家族と訪れ、穏やかで美しいウクライナの風景に親しんできた。一日も早い戦争終結を願う。

 20年前に来日した母エレナさん(42)と、日本人の父雅史さん(63)の三男として2007年に広島市内で生まれた。名前は当時の広島東洋カープの人気選手に由来。アニメ「アンパンマン」で見た弦楽器に引かれ、5歳からバイオリンを習い始めた。

 10歳でドイツ・ハノーバーの音楽大付属校へ留学。昨春、2年早く修了し、南区の実家へ一時帰国していたさなか、ロシアが侵攻を開始した。

 「仲が良かった民族同士が殺し合うなんて」。ピアノが得意な幼なじみの岡野純大さん(16)と開く演奏会は、毎回席が埋まる。既に募金箱などへ100万円以上が寄せられ、ウクライナのロータリークラブを通じて人道支援に寄付している。

 夢はチャイコフスキーのバイオリン協奏曲を弾くこと。「音楽に国籍も国境もない。聴いた人が幸せになるソリストになりたい」。30日に廿日市市、5月7日に三次市で演奏した後、ドイツへ戻り、夏のコンクールに挑む。(桑島美帆)

(2022年4月26日朝刊掲載)

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