×

ニュース

米給油機、来年に岩国移転 岩国市・山口県に国伝達 3機増え15機

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に配備されているKC130空中給油機について、岸信夫外務副大臣たちは30日、岩国市役所と山口県庁を訪れ、2014年6~9月に米海兵隊岩国基地(岩国市)に全15機を移転する方針を伝えた。市と県は「普天間問題の見通しが立つまでは認めない」とする従来の姿勢をあらためて示した。(野田華奈子、村田拓也)

 岸副大臣と木原稔防衛政務官が日米両政府の協議を踏まえ、福田良彦市長、藤部秀則副知事にそれぞれ会い、説明した。

 国は普天間飛行場の沖縄県名護市辺野古への移設計画を「(普天間問題の)唯一の解決策」と強調。「沖縄の基地負担の軽減を目に見える形で精力的に進めたい」とし、普天間移設前に空中給油機を岩国基地に先行移転させることへの理解を求めた。普天間の空中給油機は当初は12機だったが、現在は米軍の体制変更に伴い15機になっている。家族を含め約870人が移る。

 福田市長は「現時点において(普天間問題の解決が前提という)考えに変更はない」としたが、沖縄の負担軽減には理解を示した。11月にも現地を訪れ、給油機の運用状況を確認した上で、総合的に判断する考えを示した。

 藤部副知事は「移転は普天間飛行場の全面返還に伴うもの」と述べる一方、市の意向も尊重するとした。

 また、国側は事実上機能していなかった米軍の祖生(そお)通信所(岩国市)を整備し、使用再開する方針を伝えた。

 給油機移転は2006年の在日米軍再編ロードマップ(行程表)に盛り込まれ、市と県は普天間問題の解決を前提に容認している。普天間移設は難航しているが、3日の日米安全保障協議委員会(2プラス2)では、時期は明示されなかったものの岩国基地への移転協議の加速化が確認されていた。

 2プラス2ではこのほか米軍厚木基地(神奈川県綾瀬市など)の岩国基地への空母艦載機移転を17年ごろまでに完了させることも合意している。

KC130空中給油機
 空中でほかの航空機に給油する任務や、部隊や物資などの輸送にあたる。計画では、訓練は海上自衛隊鹿屋基地(鹿児島県鹿屋市)とグアムとのローテーションで展開。米軍普天間飛行場には、2012年11月時点で15機が配備されており、基地監視団体によると米海兵隊岩国基地にも年に100回以上飛来している。

【解説】国に流されず慎重判断を

 国が、KC130空中給油機の先行移転を岩国市と県に求めた背景には、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を速やかに進める狙いがある。

 沖縄では、辺野古沿岸部の埋め立てが認められるかどうかが注目され、移設問題が争点となる名護市長選を来年1月に控える。「負担軽減」を、具体的な行動で示したい必死さが伝わる。

 だが、地元の岩国市と県は、普天間問題の見通しが立つまでは認めない立場を貫いてきた。国の思惑とは相いれない。福田市長は、普天間の代替施設の見通しが立たない場合も想定。沖縄で給油機の運用状況を見た上で、判断したい考えだ。

 給油機移転は、1996年の日米特別行動委員会(SACO)で合意。2006年の在日米軍再編ロードマップで、空母艦載機移転と関連付けられた。給油機移転によって再編計画が動きだせば、基地の機能強化は確実に進む。

 一方で、現在の市庁舎建設には、給油機移転容認に伴う補助金が使われている。今回の先行移転の「見返り」として、市が要望していた海上自衛隊の部隊残留を指摘する専門家もいる。

 給油機の受け入れは、真に沖縄の負担軽減につながるのか。市民の暮らしの安全は守れるのか。米軍の都合や国の意向に流されることなく、地元自治体は慎重に見極めてほしい。(野田華奈子)

(2013年10月31日朝刊掲載)

年別アーカイブ