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連載・特集

明日への希望 第45回FF <上> 平和の祈り

反戦の訴え込め曲選び

 4月下旬、広島市中区のスタジオでウクライナ国旗と同じ青と黄のTシャツを着た子どもたちが跳ねるように踊っていた。5月4日午後3時から、NTTクレドホール(中区)のダリアステージでダンスを披露する「木原世宥子(ようこ)とFUNKY JAM KID’S」のメンバーだ。

 園児から社会人までの15人が出演し、ひろしまフラワーフェスティバル(FF)では10曲披露する。グループは1991年の結成以降、FFには毎年のように出場してきた。例年、世代問わず盛り上がれる曲を選んできたが、今年は平和を希求する2曲を取り入れる。ロシア軍によるウクライナ侵攻が続く中で「命の尊さを訴えたい」とグループ内で考えたからだ。

「核の恐怖共有」

 選んだのは講師の木原世宥子さんが96年以降、毎年8月に市内で上演している平和創作劇「I PRAY」の中の2曲だ。原爆投下後の広島を舞台に焦土から立ち上がる市民を描く作品で、グループの子どもたちも毎年出演している。木原さんは「プーチン大統領が核兵器の使用を示唆したことは許せない。一人でも多くの人と、戦争と核の恐ろしさを共有したい」と話す。

 2曲のうちの一つは米国の歌手スティービー・ワンダーさんの「I Wish」。「あの日々がもう一度戻ってきたらいいのに」と懐かしむ曲に合わせ、ウクライナカラーのTシャツを着た子どもたちが踊る。曲の前に「核の被害を繰り返してはならないと、全世界に伝えていかなければなりません」と観客に訴えかける。

 もう一曲はオリジナル曲「復活」。被爆者たちが絶望の中でも前を向こうとする姿を子どもたちが演じる。安佐南区の高校3年尼子楓華(ふうか)さん(17)は「ウクライナの状況をニュースで見るたびつらい。家族を失った悲しみを表現する舞台の曲を通じ、戦争をやめてと訴えたい」と力を込めた。

広がる抗議の歌

 ウクライナへの思いを込めたステージは他にも広がる。三次市のシンガー・ソングライター佐々木リョウさん(34)は昨年作った反戦歌「1945,Hiroshima」を歌う予定だ。罪のない市民が犠牲になっているウクライナ侵攻への抗議の意を唱えるために。

 これまで平和をテーマにした曲を歌うときは「ヒロシマを風化させない」という思いが強かったという。「ことしは『戦争反対』という強い気持ちを込めて歌いたい。平和の尊さを感じとってほしい」。4日午後0時35分、音楽の力を信じ広島国際会議場(中区)のカーネーションステージに立つ。(高本友子)

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 新型コロナウイルス禍を経て、一般公募の出演者によるステージが花と平和の祭典に戻ってくる。第45回のFFが5月3~5日、中区の平和記念公園や広島国際会議場で開かれる。戦禍が続く世界への平和の祈りやコロナ禍の苦労、そして会場を彩る花に込められた思い…。明日への希望をつなごうとする人たちがいる。

(2022年4月28日朝刊掲載)

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