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非核提唱 県主導に長短 へいわ創造機構ひろしま 発足1年

SDGsで賛同/関心広がり欠く

 広島県などの官民でつくる「へいわ創造機構ひろしま(HOPe)」が、発足して1年たった。地球と人類の持続可能性の観点から核兵器の廃絶を提唱。2030年までに核保有国を巻き込んだ国際合意を結んだ上で45年までに廃絶を目指す道筋を描き、国際組織の設立や若い世代の教育を進めている。ただ県主導の「平和行政」に対し、肝心の県民の理解がまだ広がっていない。(宮野史康)

 3月半ば、HOPeのオンライン講座に核軍縮や国連の持続可能な開発目標(SDGs)に関心のある10、20代の17人が参加した。21年12月に始めて5回目で最終回。企業と直接、間接の核兵器製造の関わりを就職先選びの基準とする活動など、SDGs分野の事例を参考に核兵器廃絶に向けた提言をまとめた。

 参加した国際基督教大3年の佐藤優実さん(20)=広島市中区出身=は「SDGsは若い世代が注目している。核軍縮と結びつければ、仲間を増やせる」。他の参加者と同世代向けの集会を開くという。

国連会合で訴え

 HOPeは21年4月、核兵器廃絶の目標を定めた県の「ひろしまイニシアチブ」を推進するため県や県内6大学など20団体で発足した。湯崎英彦知事が代表を務め、事務局を県平和推進プロジェクト・チーム(17人)が担う。政策作りと交渉役に、国連で紛争調停を経験した島田久仁彦氏を起用。21年度は国際会議の参加費や主催行事の開催費など1億7200万円の予算を全額県費で組んだ。

 この1年、オンライン上で反核団体の総会や国連の会合に参加し、各国の外交官や研究者、市民と接触。30年が期限の国連のSDGsに続く目標に核兵器廃絶を掲げるよう説いてきた。

 今月4日には21カ国の29団体、38個人で新組織「グローバル・アライアンス」を設立。国連でポストSDGsの交渉に臨む各国に働き掛ける運動体に位置付ける。広島市立大広島平和研究所の大芝亮所長は「国家中心の国際政治を市民、地方自治体、企業も参加する仕組みに変えようとする意欲的な試み」と評価する。

 国内外で徐々に活動が認知される中、足元の県民の関心が高まっているとは言い難い。年4回ある県議会定例会の代表・一般質問でHOPeは一度も取り上げられていない。湯崎知事を支える会派の県議からは「新しい組織をどんどんつくっても県民はついていけん」との声が漏れる。片仮名を多用した事業や組織の名称も不評だ。

新組織に疑問符

 広島市が主導する平和首長会議は、新組織には参加しなかった。事務局は「組織の在り方が未定だし、目標年限を定めず活動する私たちのビジョンともずれがある」と説明する。参加を見送った別の市民団体の関係者も「取り組みは面白いが、県民の税金を使いながら、県民とどう一緒にやっていくのかがよく分からない」と指摘する。

 HOPeは、核兵器廃絶と持続可能な未来をテーマにした市民向けの講座や新組織の説明会を開いてきたが、県民の理解は道半ばだと認める。島田氏は「今後の政策提言づくりでは、一層発信していきたい」と強調している。

ひろしまイニシアチブ

 核兵器のない世界の実現に向けた世界の各国や市民への提案。広島県が2021年3月に骨子をまとめた。核保有国を含めた核兵器廃絶の合意▽核兵器を拒否する世界的な規範の強化▽核兵器に依存しない安全保障政策の後押し▽企業、非政府組織(NGO)、教育・宗教団体など市民社会と国や国際機関が協働する場づくり―を4本柱とする。推進組織として、へいわ創造機構ひろしま(HOPe)が発足した。

(2022年4月28日朝刊掲載)

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