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土地に宿る空襲の記憶 金子雅和監督 「リング・ワンダリング」 シネマ尾道で7日から上映

 東京大空襲の記憶をたどり、命の重みについて考えるファンタジー映画「リング・ワンダリング」が5月7日から、尾道市のシネマ尾道で上映される。2016年の「アルビノの木」が海外の映画祭で注目を集めた金子雅和監督の新作。東京都出身の金子監督は「再開発が進む東京の地面の下に埋もれた記憶を掘り下げたかった」と語る。

 脚本も金子監督のオリジナル。ニホンオオカミを題材にした漫画を描く主人公の男性が、ある女性と出会い、東京大空襲の歴史をたどる。昭和と現代、さらにニホンオオカミが絶滅したとされる明治の三つの時代をつなぎ、寓話(ぐうわ)的な物語に仕上げた。金子監督は「戦争や空襲の歴史はそこかしこにある。映画を見終えた時に街や土地の見え方が変わったらうれしい」と話す。

 金子監督は13年と16年に広島国際映画祭(13年当時はダマー映画祭inヒロシマ)に参加。広島で各国の映画人と出会い「広い視野で映画作りを志すきっかけになった」と言う。「リング―」は21年のインド国際映画祭で最高賞に当たる「金孔雀賞」を受賞した。

 主人公には若手実力派の笠松将、ヒロインには阿部純子を抜てき。美術を手掛けた広島市出身の部谷京子とは初めて一緒に仕事をした。「一度も意見が食い違うことなく、イメージする世界観をつくりだしてもらった」と感謝する。初日の上映後には舞台あいさつを予定している。(里田明美)

(2022年4月30日朝刊掲載)

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