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衆院、初の核兵器廃絶決議 「行動 被爆国の責務」

■記者 岡田浩平

 衆院は16日の本会議で、被爆国の責務として、核兵器廃絶に向けて国際社会で主導的な役割を果たすよう政府に求める決議案を全会一致で採択した。核兵器廃絶を前面に打ち出した国会決議は初めて。

 「核兵器廃絶に向けた取り組みの強化を求める決議」は、日本は「唯一の被爆国として世界の核兵器廃絶に向けて先頭に立って行動する責務がある」と指摘。核関連の技術、物質の流出など拡散の脅威に対し、日本をはじめ非保有国が連携して実効ある査察体制の確立を積極的に進めるべきだとの姿勢を示した。

 さらに「核兵器のない世界」の追求を掲げるオバマ米大統領の就任や北朝鮮の核実験に触れ、廃絶への潮流をより太くする政府の努力を要請。具体的に来年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議の主導や、包括的核実験禁止条約(CTBT)の速やかな発効など核軍縮、不拡散の取り組み強化を求めた。

 決議はオバマ氏の「プラハ演説」を受け、民主党が5月に議院運営委員会理事会で提案。国会の統一した意思表示を目標に与野党で内容を調整し、全会派が共同で本会議に提案した。採択後、麻生太郎首相は「日本の安全を確保すべく国際的な核軍縮、不拡散体制の強化のため決意を新たに取り組む」と所信を述べた。

 参院も与野党間で文案を調整次第、近く決議を提出する見通し。

(2009年6月17日朝刊掲載)

<解説>超党派連携に意義 具体化へ行動急げ

■記者 岡田浩平

 「核兵器廃絶に向けた取り組みの強化を求める決議案」が衆院で16日採択された背景には、廃絶の機運のかつてない盛り上がりがある。

 その象徴が「核兵器のない世界」の追求を明言したオバマ米大統領の「プラハ演説」(4月5日)。日本政府は支持を表明し、中曽根弘文外相は呼応するように核兵器廃絶に向けた「11の指標」を発表。共産党はオバマ氏に異例の歓迎の手紙を送り、返信を受けた。河野洋平衆院議長は早期の国会決議に期待を寄せ、超党派で決議をする素地ができた。

 北朝鮮の核実験強行など不安な情勢もあって、米国の「核の傘」の問題や核兵器の先制不使用をめぐり各党の考えは異なる。決議案作りを主導した民主党議員は「先制不使用を米国に求めるよう提案しても自民党は乗らない。採決しても負ける」と指摘する。

 ただ、核兵器廃絶の意思を超党派で明確に示した点は意義がある。今後、決議を具体化するスピード感ある行動が被爆国の政府、国会に求められる。

(2009年6月17日朝刊掲載)

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