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[憲法 施行75年] 首相、9条維持から改憲 政調会長時代から姿勢変化 政権基盤強化狙う?

 岸田文雄首相(広島1区)は就任後初めて、3日の憲法記念日を迎える。戦後日本を形づくった施行75年の最高法規に対し、被爆地選出の政治家として、どんなスタンスを取ってきたか。自民党の政調会長就任当初は9条維持を唱えたが、昨秋の総裁選では党改憲案4項目を念頭に「任期中の実現」を主張。保守強硬派を取り込み、政権基盤の強化を図るためではないかとの見方が党内に広がる。(樋口浩二)

 4月下旬、防衛費増額や敵基地攻撃能力の「反撃能力」への改称を求める自民党の提言を受け取った。憲法9条に基づく専守防衛の在り方に関わる内容だが、首相は「防衛力強化は喫緊の課題だ。しっかり受け止める」と述べた。外務、防衛両大臣を経験。ロシアのウクライナ侵攻を受け、国防強化をより強く唱える。

 9条を巡っては2017年8月、政調会長就任の記者会見で「(9条改正を考えない姿勢は)変わっていない」と断言していた。19年11月、地元広島で自民党員たちを集めた会合でも「条文と精神はともに維持する」と強調。ただ、この場では「戦争放棄、専守防衛、平和主義は何ら変えることなく現実の矛盾を解消する」と言い添えた。

安倍氏を意識

 率いる伝統派閥・宏池会が長年モットーとしてきたのは「軽武装・経済優先」。それを引き継ぐ姿勢を見せる一方で、改憲に向けた党内調整に関わった当事者の一人でもあった。

 党改憲案は、憲法9条への自衛隊明記▽大規模災害などの緊急事態対応▽参院選の合区解消▽教育の充実―の4項目。公表された18年3月、岸田首相は政策立案を担う政調会長の職にあった。言動が変わり始めたのは「ポスト安倍」の呼び声の高まりと重なる。改憲を悲願とする安倍晋三元首相(山口4区)を意識していたのは確かだ。

任期中の実現

 20年9月の党総裁選。立候補会見で改憲を「絶えず考えていかなければならない課題だ」と訴えた。より踏み込んだのは、雪辱を果たした昨年9月の総裁選で「(改憲は)任期中に実現を目指していきたい。少なくともめどを付けたい」。首相就任を受けた所信表明演説では「国民的な議論を積極的に進めていただくことを期待する」と述べた。

 3月の自民党大会では「今こそ取り組まねばならない課題だ。改憲の党是を成し遂げよう」と呼び掛けた。党内にはいろんな見立てがある。「首相はレガシー(政治遺産)づくりに動くだろう」「改憲は保守強硬派をつなぎ留めるための一つの策ではないか」

 憲法記念日にどんなメッセージを発するか。そして今夏の参院選後に首相がどう動くのか注目される。

(2022年5月3日朝刊掲載)

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