社説 本紙創刊130周年 新たな時代 地域と歩む
22年5月6日
きょう中国新聞は創刊130周年を迎えた。明治、大正、昭和、平成、令和と、激動の日々に重ねた紙齢は4万5930号を刻んだ。読者の皆さんに改めて深い感謝を申し上げる。
130周年に当たり、私たちは新たな目標を定めた。
「確かな情報でこのまちを守り、力づけ、おもしろくする」というミッション(使命)と、加えて「このまちの未来をともに創造する地域応援企業グループに進化する」とのビジョン(将来像)である。
手を携え、地域社会の未来をつくっていく。その担い手としての思いをまとめ上げたものだ。その決意をゆるがせにすることなく、グループを挙げてまい進していきたい。
本紙発行の歩みを振り返ると、最大の窮地は、やはり被爆の時だったといえる。当時いた社員のほぼ3分の1に当たる114人が犠牲になった。
社屋が炎上し、2日間は新聞発行も止めざるを得なかった。しかし3日目には代行印刷へと踏み出す。被爆の惨状を伝えるとともに、1カ月ほどで自社印刷の復活を成し遂げた。
私たちが「民主国家の建設」「地方文化の高揚」と並び、「世界平和の確立」を社是に掲げる理由もそこにある。
世界初の被爆新聞社として、被爆地の思いを世界に発信し、戦争と核兵器の廃絶を訴え続けていく。それは被爆者から受け継いだ重い使命でもある。
小型戦術核など「使える核兵器」の開発が進み、ウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領は核兵器使用をちらつかせる言葉を口にする。国内でも、核保有が取り沙汰される危うい時代になっている。核廃絶なくして平和な世界は築けないとの願いを、私たちは粘り強く訴え続けなくてはならない。
130年前の第1号は、こんなふうに宣言している。政府と人民の間に立ち、ただ良心の率いるままに往(ゆ)かんとす―。地域と共に歩むことを胸に刻み、中国地方5県を拠点にニュースをつぶさに伝えてきた、まさに私たちの原点である。
新聞協会賞を初受賞した連載「瀬戸内海」をはじめ、菊池寛賞を受けた「暴力追放キャンペーン」を源流とする暴追運動は今なお継続的な取材テーマとして取り組んでいる。
この10年間は、西日本豪雨などに代表される豪雨災害の被害を追い、過疎の波にさらされ続ける中山間地域の人々の暮らしについても定点観測を重ねてきた。河井克行元法相夫妻による大規模な公選法違反事件にも切り込んで、政治とカネの問題をえぐり出し、世に問うた。
メディアは多様化し、虚実の入り交じる情報が瞬時に世界を巡る時代になっている。新聞を取り巻く環境は厳しい。
とはいえフェイクニュースの氾濫する時代だからこそ、新聞の持ち味である「確かな情報」や信頼度が、社会にとって大きなよりどころになると信じる。
紙媒体だけでは不十分な面もあるだろう。事実にこだわる姿勢をさらに進化させ、紙面、デジタルの両輪で充実した報道に取り組んでいく必要がある。
ニュースをいち早く、そして深掘りして日々伝えていくことで、地域を守り、読者を力づけていく。冒頭に掲げた目標の意味は、そこにある。
(2022年5月5日朝刊掲載)
130周年に当たり、私たちは新たな目標を定めた。
「確かな情報でこのまちを守り、力づけ、おもしろくする」というミッション(使命)と、加えて「このまちの未来をともに創造する地域応援企業グループに進化する」とのビジョン(将来像)である。
手を携え、地域社会の未来をつくっていく。その担い手としての思いをまとめ上げたものだ。その決意をゆるがせにすることなく、グループを挙げてまい進していきたい。
本紙発行の歩みを振り返ると、最大の窮地は、やはり被爆の時だったといえる。当時いた社員のほぼ3分の1に当たる114人が犠牲になった。
社屋が炎上し、2日間は新聞発行も止めざるを得なかった。しかし3日目には代行印刷へと踏み出す。被爆の惨状を伝えるとともに、1カ月ほどで自社印刷の復活を成し遂げた。
私たちが「民主国家の建設」「地方文化の高揚」と並び、「世界平和の確立」を社是に掲げる理由もそこにある。
世界初の被爆新聞社として、被爆地の思いを世界に発信し、戦争と核兵器の廃絶を訴え続けていく。それは被爆者から受け継いだ重い使命でもある。
小型戦術核など「使える核兵器」の開発が進み、ウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領は核兵器使用をちらつかせる言葉を口にする。国内でも、核保有が取り沙汰される危うい時代になっている。核廃絶なくして平和な世界は築けないとの願いを、私たちは粘り強く訴え続けなくてはならない。
130年前の第1号は、こんなふうに宣言している。政府と人民の間に立ち、ただ良心の率いるままに往(ゆ)かんとす―。地域と共に歩むことを胸に刻み、中国地方5県を拠点にニュースをつぶさに伝えてきた、まさに私たちの原点である。
新聞協会賞を初受賞した連載「瀬戸内海」をはじめ、菊池寛賞を受けた「暴力追放キャンペーン」を源流とする暴追運動は今なお継続的な取材テーマとして取り組んでいる。
この10年間は、西日本豪雨などに代表される豪雨災害の被害を追い、過疎の波にさらされ続ける中山間地域の人々の暮らしについても定点観測を重ねてきた。河井克行元法相夫妻による大規模な公選法違反事件にも切り込んで、政治とカネの問題をえぐり出し、世に問うた。
メディアは多様化し、虚実の入り交じる情報が瞬時に世界を巡る時代になっている。新聞を取り巻く環境は厳しい。
とはいえフェイクニュースの氾濫する時代だからこそ、新聞の持ち味である「確かな情報」や信頼度が、社会にとって大きなよりどころになると信じる。
紙媒体だけでは不十分な面もあるだろう。事実にこだわる姿勢をさらに進化させ、紙面、デジタルの両輪で充実した報道に取り組んでいく必要がある。
ニュースをいち早く、そして深掘りして日々伝えていくことで、地域を守り、読者を力づけていく。冒頭に掲げた目標の意味は、そこにある。
(2022年5月5日朝刊掲載)