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避難の14歳 核脅威に涙 ウクライナから福山へ 母国への不安募る

姉と原爆資料館訪問

 ロシアの軍事侵攻によりウクライナ北西部から逃れてきたアナスタシヤ・クラブチュクさん(14)が、福山市在住の姉オレナさん(33)と一緒に暮らしている。4月上旬に広島市中区の原爆資料館を訪れ、核被害の実態に初めて触れた。プーチン大統領が核兵器使用の示唆を繰り返す中、母国への不安を募らせる。(門戸隆彦)

 アナスタシヤさんは、首都キーウ(キエフ)の西約180キロのチュドニフに住む中学生。航空機エンジニアの父オレグさん(59)の勧めで3月、姉を頼り日本に避難した。いとこと共にポーランドへ逃げた後、単身で成田空港に到着。出迎えた姉オレナさんに連れられ、同14日に福山市へ入った。

 オレナさんは約7年前、日本語などを学ぶため来日した。永住権を取得し、現在は福山市の飲食店でアルバイトをしながら生計を立てている。

 姉妹で平和記念公園を訪れたのは4月2日。プーチン大統領が核兵器の使用も辞さない姿勢を示す中、不安を感じていたアナスタシヤさんが「実際に使われたら、どうなるのかを知りたい」と姉に頼んだ。

 原爆ドームや原爆資料館を巡り、資料館では焼け野原になった爆心地付近や被爆者のやけどの写真、黒焦げの弁当箱、服などの遺品を見たという。「ウクライナに落とされたと想像するだけで怖い」とアナスタシヤさん。無差別、広範囲に被害が及ぶ核兵器の脅威を肌で感じ、涙が止まらなかったという。

 平日はオンラインで母国の学校の授業を受け、資料館で見た被爆の実態も友人たちに伝えたという。プーチン大統領は核兵器使用を示唆する発言を繰り返し、ウクライナを軍事支援する欧米をけん制する。アナスタシヤさんは「同じ悲劇が繰り返されてはいけない。早く戦争は終わらせてほしい」と願う。

(2022年5月5日朝刊掲載)

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