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社説・コラム

天風録 『核抜き・本土並み』

 気骨あふれるTVドラマだった。NHK・BSで先日放送された「ふたりのウルトラマン」。沖縄出身の脚本家、金城(きんじょう)哲夫と上原正三(しょうぞう)両氏が昭和時代の東京で特撮番組作りに苦闘する。その姿を再現し、本土に寄せる沖縄人の複雑な思いを伝えた▲今月15日は、その沖縄が本土に復帰して半世紀の節目となる。「核抜き・本土並み」は当時の日米両政府が合意したキャッチフレーズだった。核抜きは文字通り、沖縄の全ての米軍基地から核弾頭を完全撤去すること▲そして本土並みは、沖縄に日本の法・経済制度や日米安保条約を適用し、例えば自動車は道路の左側を走るということ。だが抽象的な「本土並み」の言葉に、過密な米軍基地を本土と同水準に減らすという意味は含まれなかった▲こうして本紙がおとといの1面で紹介した全国世論調査では、沖縄の基地負担を「不平等」と感じる人が約8割に上った。また自分の住む地域への基地移設に「反対」する人はほぼ7割に。これが復帰から50年の現実▲くだんのドラマには上原氏が復帰に白ける半世紀前のシーンも。「支配者がアメリカから日本に変わるだけ」。本土並みは中途半端に終わるとの予言に聞こえた。

(2022年5月7日朝刊掲載)

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