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燃料不足・食料偏在 深刻 隣国拠点に避難民支援 神石高原のNPO ウクライナの現状報告

 ロシアによるウクライナ侵攻で、広島県神石高原町の認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)が、隣国モルドバを拠点に避難民たちの支援活動を続けている。帰国し、9日に県庁で記者会見した大西健丞代表理事は、ウクライナ国内で燃料不足や食料の偏在が深刻になっている状況を報告。「家が壊され、家族が離散し、先が見えない人がたくさんいる」と協力を呼び掛けた。

 PWJはロシアがウクライナへの侵攻を始めた2月24日の数日後から周辺国にスタッフを派遣。モルドバの首都キシニョフに事務所を構え、避難民への物資の提供や医療支援に取り組んでいる。4月にはキシニョフの避難所に診療所を設け、日本から派遣した医師、看護師、薬剤師が1日約20人を診ているという。

 大西代表理事たちスタッフ5人は4月26日から8日間、ウクライナを訪問。首都キーウや近郊の町ボロディアンカ、北部の都市チェルニヒウを回り、戦闘による被害や住民が求めている支援の内容を調べた。

 貯蔵施設や物資を運ぶ鉄道橋が破壊されたために燃料不足に陥り、供給への不安からガソリンスタンドには車列ができていた。現地企業からは、人道支援の車両を対象にした燃料の供給拠点整備について協力を求められた。

 また、地方部には穀物や野菜、果物があるが、都市部に輸送できていなかった。住民の心のよりどころになっているペットの餌も不足しがちで、チェルニヒウでは、PWJと現地企業が連携して、ペットの餌を配ったという。

 大西代表理事は会見で、民間施設や居住地区への砲撃、爆撃の跡を視察した際の様子を映像で紹介した。「狙ったというか、構わずやったと感じた。民間人に全く配慮のない攻撃だ」と憤った。

 PWJは6月上旬にもウクライナに第2陣を派遣し、チェルニヒウで破壊された医療施設の再建に取り組む。住民の避難路の安全を確認し、医薬品を輸送するためのドローンの提供も検討している。(宮野史康)

(2022年5月10日朝刊掲載)

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