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原爆が奪った女学生の夢 被爆者の梶本さん 母校の安田女子中高で証言

 安田高等女学校(現安田女子中高、広島市中区)3年だった14歳の時に被爆した梶本淑子(よしこ)さん(91)=西区=が12日、母校で体験を語った。「一瞬で、あなたたちと同世代の夢と希望が奪われました」。中学2年生約150人に訴えた。

 梶本さんは爆心地から約2・3キロの工場に動員され、飛行機部品の製造作業中に建物の下敷きになった。流血しながら必死にはい出ると、外は焼け野原。真っ黒に焼かれた生徒もいた。自宅で被爆した父は無傷だったが、1年半後に亡くなった。「77年間、私も放射線の影響を心配しながら生きてきた」

 原爆犠牲者の遺品の焦げた制服をスライドで映しながら、梶本さんは「誰の顔なのか分からなくなるほど、顔が焼けたのです。その姿を見た家族の気持ちを想像して」と語りかけた。涙をこぼして聞き入る生徒も。田中優衣さん(13)は「自分に置き換えて想像した。聞いたことを周りに伝えたい」と話していた。

 同校では生徒315人と教職員が学徒動員先などで犠牲になった。証言後に梶本さんは「制服は数カ月しか着られず、勉強もできなかった。今の生徒に同じ思いをさせなくない」と力を込めた。ロシアのウクライナ侵攻にも触れ「原爆は現在の問題。二度と繰り返されないよう行動して」と呼び掛けた。(湯浅梨奈)

(2022年5月13日朝刊掲載)

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