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核軍縮推進に意欲 使用示唆の露「許しがたい」 EU大統領 広島訪問

 欧州連合(EU)のミシェル大統領が13日、被爆地の広島市を初めて訪れた。平和記念公園(中区)の原爆資料館を視察した後、ウクライナに侵攻したロシアが核兵器使用を示唆していることを「恥ずべきで許しがたい」と強く批判した。核兵器の使用リスクが高まる中、「世界からの大量破壊兵器の廃絶は急務だ」と述べ、日本政府などと連携した世界の核軍縮推進に意欲を示した。

 ミシェル氏は、滝川卓男館長の案内で約30分かけて資料館を見学。広島の街並みが一瞬で破壊された様子をCGで伝える「ホワイトパノラマ」のほか、被爆した子どもの写真、被爆者が描いた原爆の絵などを熱心に見たという。見学後に「広島の悲劇的な記憶が私たちの行動を導きますように」などと記帳した。

 資料館で発表した声明では、原爆被害について「人間ができる最悪のこと」と述べ、世界のリーダーに広島を訪れ、被爆の実態に触れるよう促した。北朝鮮のミサイル実験などにも言及し、世界の核リスクが高まっていると指摘。12日の岸田文雄首相(広島1区)との面会を踏まえ、核軍縮や核不拡散などの安全保障分野で日欧が連携する重要性を強調した。

 雨天の下、原爆慰霊碑に花を手向けた。松井一実市長との面会では「広島は大量破壊兵器の拡散に反対するメッセージを世界に伝える役割がある」と述べた。会談後、松井市長は「ロシアと境界を接するEUの代表として、被爆の実相を踏まえて対処しようとされていることに感謝したい」と話した。

 ミシェル氏は、被爆者の小倉桂子さん(84)=中区=の証言を聞き、広島県の湯崎英彦知事とも面会。いずれも非公開で、湯崎知事とは核兵器廃絶の重要性などについて意見を交わした。平和記念公園で同行した核軍縮・不拡散問題担当の寺田稔首相補佐官(広島5区)は「EU首脳の訪問は、国際社会への強い平和のメッセージとなり意義深い」と話した。

 ミシェル氏はベルギー首相を経て、2019年12月にEU大統領に就任。22年3月に再選出された。EU大統領の広島訪問は19年6月のトゥスク氏に続き2人目。岸田首相との定期首脳協議に合わせ、フォンデアライエン欧州委員長と来日した。(明知隼二、小林可奈)

(2022年5月14日朝刊掲載)

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