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核の恐怖 欧州も共有を EU大統領 広島訪問 被爆者ら願い 「共に廃絶へ」

 ロシアのウクライナ侵攻に揺れる欧州連合(EU)の首脳として13日に被爆地の広島市を訪れたミシェル大統領は、核兵器の使用をちらつかせるロシアを厳しく非難し、大量破壊兵器の廃絶への強い決意を表明した。広島の被爆者たちからは、廃絶の実現に向けたリーダーシップや具体的な行動を求める声が出た。(明知隼二、小林可奈)

 「とても熱心に聞いてくれた」。ミシェル氏に被爆体験を証言した小倉桂子さん(84)=中区=は振り返った。8歳で被爆した自身の経験に加え、多くの子どもが犠牲になった惨状を伝えた。ミシェル氏は感謝し、「私たち(政治家)は戦争回避のために働かないといけない」と話したという。

 小倉さんは最近、欧州からの証言や取材の依頼が増え、ウクライナ情勢を受けた関心の高まりを感じている。「核兵器廃絶は、世界の全ての人が努力をしないといけない」。自らの証言に向き合ってくれたEU首脳の今後のリーダーシップに期待した。

 一方で核抑止への依存は強まりつつある。ロシアに対する危機感から、北欧フィンランドやスウェーデンなど、欧米の「核同盟」でもある北大西洋条約機構(NATO)加盟を目指す動きが相次ぐ。

 広島県被団協の佐久間邦彦理事長(77)は「欧州で核兵器に頼る動きが広がろうとする中、EU首脳が被爆地を訪れた意義は大きい。広島で触れた核兵器の非人道性を欧州で共有してほしい」と切実に願った。

 ミシェル氏の被爆地訪問が、先進7カ国首脳会議(G7サミット)の広島開催の後押しとなることを期待する声もある。EUに加盟する核兵器保有国フランスの同意が、広島開催の実現に向けた焦点の一つとされているためだ。県被団協の箕牧(みまき)智之理事長(80)は「広島開催は、核兵器廃絶の力強いメッセージとなる。広島で触れた被爆者の苦しみを胸に、実現へ尽力してほしい」と期待した。

 「大量破壊兵器の廃絶」を語ったミシェル氏の言葉には、若い世代も期待を寄せる。平和記念公園(中区)のガイド活動をするNPO法人ピースカルチャービレッジ(三次市)のスタッフ楢崎桃花(ももか)さん(21)=安芸区=は「核兵器の脅威は過去のものではなく、現代の私たちに及んでいる。廃絶に向け語った内容を行動に移してほしい」と力を込めた。

(2022年5月14日朝刊掲載)

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