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社説・コラム

天風録 『沖縄なお道半ば』

 歓迎一色という雰囲気には程遠かったようだ。沖縄の日本復帰を伝えた半世紀前の本紙朝刊に、改めて感じた。「くっきり 祝賀と怒り」との大見出しが1面を飾り、「全国で抗議行動」の見出しも添えられていた▲確かに、米軍基地は手つかずのまま。核兵器撤去の約束が守られるか不安な人も少なくなかった。「平和な島」の夢がかすんで見えたのは、その日降った雨のせいではなかったはずだ。地元の願いと裏腹に、本土との溝は限りなく深く思えただろう▲50年たった今なお、県民所得は全国平均に水をあけられ、困窮する子どもの割合は際立って多い。自立型の経済を目指しているものの、道半ばだ。潜在能力を生かし切れないのがもどかしい▲加えて、ここ数年は国の高圧的な姿勢が目立つ。先の戦争で沖縄を本土の「捨て石」にし、戦後は重い基地負担を負わせ続けてきた。それに負い目を感じる政治家がいなくなった影響か▲あらゆる国の架け橋を意味する「万国津梁(しんりょう)」。沖縄の可能性を表すこの言葉がきのう復帰50年式典で聞かれた。そろって口にした首相と知事だが、基地問題を巡る溝は埋まらない。みなが心から復帰を祝える日は、いつになるのか。

(2022年5月16日朝刊掲載)

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