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胎内被爆者の苦悩 英訳 関西学院大・貞岩さんら有志50人 来月 電子書籍に

 広島市南区出身で関西学院大4年貞岩しずくさん(22)=兵庫県西宮市=が、胎内被爆者の体験記の英訳に取り組んでいる。全国の学生有志に呼びかけて翻訳グループを結成し、分担して進めている。ウクライナに侵攻したロシアが核兵器使用を示唆する中、「国内外の多くの人に読んでほしい」と6月に電子書籍を公開する予定だ。(小林可奈)

 翻訳するのは、原爆胎内被爆者全国連絡会が2020年に発刊した「生まれた時から被爆者」。母親のおなかの中で原爆に遭い「最年少の被爆者」と呼ばれる胎内被爆者たち約50人が差別や偏見、病気に苦しんできたことなどを伝えている。

 貞岩さんは、平和をテーマにした大学の講義の実習で同連絡会の二川一彦代表世話人(76)=東区=の証言を聞いたことがきっかけで、胎内被爆者の苦しみを知り、多くの人に伝えたいと英訳を決めた。全国の大学生たちに協力を求め、昨年8月にグループを結成。全国の大学の学生たち約50人と作業を進めている。

 グループ名は、原爆被害を伝え続ける被爆アオギリにちなんだ「AOGIRI」。原則1人が一つの証言を訳す。筆者の経験や思いに想像を巡らせながら、直訳では伝わりきらない英語表現を考えているという。「建物疎開」「被爆者健康手帳」など、戦争や被爆を巡る用語の英訳は原爆資料館(中区)の資料などを参考にした。

 同連絡会の二川代表世話人は「被爆者が高齢化する中、若者が体験や思いに真剣に向き合ってくれてとてもありがたい」と感謝。貞岩さんは「どんなことがあっても核兵器を使わない社会にするため、多くの人に読んでほしい」と願っている。

 電子書籍の詳細などは、AOGIRIのホームページで紹介している。 https://aogirivoice08.wixsite.com/my‐site‐2

(2022年5月17日朝刊掲載)

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