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「伝える姿勢」で共感 原爆とホロコースト 被爆者・ユダヤ人作家対談

 ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を辛うじて生き延びた両親を持つユダヤ人作家エヴァ・ホフマンさん(68)=英国=が2、3日、初めて広島市を訪れ、被爆者の小倉桂子さん(76)と、原爆とホロコーストを伝えることについて対談した。

 小倉さんは8歳の時、爆心地から約2・4キロの牛田町(現東区)で被爆。当時の様子に加え、戦後、多くの被爆者が結婚や就職などで差別を受けるのを恐れ、体験について口を閉ざした状況を説明した。

 被爆直後、小倉さんは水を求める人に水を飲ませた。すると目の前で亡くなった。「私が水をあげたから死んだんだ」。心の傷となった。約30年間、周囲に話せず、夢に見続けた。しかし、自ら被爆体験を話すようになると、夢に見なくなったという。

 また米国ワシントン郊外のスミソニアン航空宇宙博物館新館で2003年、広島に原爆を投下したB29爆撃機エノラ・ゲイが一般公開されたのを見た瞬間、小倉さんは被爆した8歳に戻り、泣きじゃくった。その様子をテレビで見たきょうだいは驚いて連絡してきたという。小倉さんは「きょうだいは被爆のことを話したがらない。これが現実です」と打ち明けた。

 ホフマンさんは「ホロコーストの生存者も恥や罪の意識を持ち続けている。自身の体験を語りたがらない。子どもにも伝えていない」と同調。「許しの心で、次世代、世界に伝えようとしている小倉さんの姿勢が素晴らしい」と話していた。

 ホフマンさんは津田塾大の招きで来日。広島は、著書を翻訳した早川敦子教授の案内で訪れた。(二井理江)

エヴァ・ホフマンさん
 45年ポーランド・クラクフ生まれ。戦後の反ユダヤ主義に身の危険を感じて13歳の時に家族でカナダに移住。米ハーバード大大学院で博士号取得。79~90年、ニューヨーク・タイムズ紙に勤務(書評担当)。89年、両親のホロコースト体験を基にした自伝を出版。東欧のユダヤ人共同体の歴史考証や、ホロコースト2世にとってのホロコーストの意味をつづった作品を出している。

(2013年11月4日朝刊掲載)

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