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旧満州入植者の体験 冊子に 世羅の松尾さん 5人に聞き取り

 旧甲山町教育長の松尾健史(たかのり)さん(80)=世羅町重永=が、旧満州(中国東北部)へ入植して戦争に巻き込まれた人たちの体験を冊子「後世に伝えたい記録」にまとめた。帰国した人からシベリア抑留などの過酷な様子を聞き、反戦の思いを未来につなごうとしている。

 A4判54ページ。松尾さんが2018年以降に聞いた同町や三原市の5人の体験談が中心になる。同市皆実の田坂満夫さん(21年死去)は1942年に満蒙開拓団義勇兵として赴き、捕虜としてシベリアに抑留された。乏しい食事や、凍傷防止のため穴を掘って靴を履いたまま眠った経験などを記している。

 尋常高等小校長だった松尾さんの父改三(かいそう)さん(故人)は当時、教え子や保護者たち10人に旧満州行きを勧めたという。7人が帰国できず亡くなった。松尾さんは「晩年の父は毎年のように遺族を訪ねて頭を下げていた。その姿が心に残り、執筆のきっかけになった」とする。

 冊子は甲山図書館(西上原)に寄贈した。「世界ではロシアによる軍事侵攻も起きている。戦争を繰り返さないためにも歴史を知ってほしい」と話す。(矢野匡洋)

(2022年5月18日朝刊掲載)

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