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輜重隊遺構石畳 800枚の半数廃棄 広島市 保存訴えた市民は落胆

 広島市中区のサッカースタジアム建設地で出土した旧陸軍の輸送部隊「中国軍管区輜重(しちょう)兵補充隊(輜重隊)」施設の被爆遺構を巡り、出土した石畳約800枚の約半数を市が廃棄していたことが18日、分かった。廃棄の規模が明らかになったのは初めて。保存や活用を求めてきた市民からは落胆の声が上がっている。

 市によると、2020年10月~21年12月の発掘調査では、馬の手入れ場や厩舎(きゅうしゃ)などに使われていた石畳約800枚が出土した。市はこのうち37枚をスタジアム建設地の約100メートル南の緑地帯に移設する方針で、予備の約20枚を含めて計約60枚を切り取って保管している。記録を取った後、約350枚は保存のため現地に埋め戻し、残る約400枚は同年度中に廃棄したという。

 市文化振興課は「全てを残すのは保管場所や経費の観点から難しい。施設建設のため取り除く必要がある部分は、記録を残した上で適切に廃棄するのは文化財調査では通常の対応だ」と説明している。予備分の活用については移設・展示の計画をまとめた上で、検討するという。

 遺構の保存を訴えてきた市民団体メンバーの多賀俊介さん(72)=西区=は「ただの遺跡とは異なる被爆遺構の価値が顧みられなかった」と残念がる。「被爆遺構は今後も見つかる可能性がある。その価値をどう評価するのか、議論がそもそも不十分だったのではないか」と市の事業の進め方にあらためて疑問を呈した。

 輜重隊の被爆遺構を巡ってはこれまで、被爆者団体や市民団体が現地での保存活用や移設範囲の拡大などを繰り返し要望していた。(明知隼二)

(2022年5月19日朝刊掲載)

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