×

ニュース

震災避難 14人の思い 広島の団体が冊子 「風化させぬ」

 東日本大震災で広島市に逃れた人の体験記をまとめた冊子「ひろしまに避難してきた私たち」=写真=が完成した。「記憶を風化させまい」と、広島市中区の市被災者支援ボランティア本部が呼び掛けて編集。震災直後の混乱や避難生活の悩みなどが切々とつづられている。

 岩手、宮城、福島の3県と東京都から避難した14人の手記や聞き取りを収めた。

 岩手県釜石市で暮らしていた60代女性は、亡くなった近所のお年寄りたちへの思いを込めた。「春になったら温泉へ行こうね。そう言っていたのに、みんないなくなってしまいました」。今も胸の空洞を抱える。

 福島県から避難してきた人たちの文には、原発事故への怒りや不安がにじむ。40代女性は移り住んだ当初、「(広島でも)みんな本当は私たちを嫌がっているんじゃないか」と外出も気が引けたという。別の40代女性は「『故郷を離れた人は故郷を捨てた人だ』と思う人もいる。今更戻れないのかな」。

 編集に取り組んだ同ボランティア本部の前本部長鈴川千賀子さんは「震災から3年目となり、過去のことになりつつある」と危惧する。「身近にいる被災者の体験や抱えている問題を共有し、支援の輪が広がるきっかけになればうれしい」と話す。

 A4判、126ページ。300部を作成。市内の公立図書館などで閲覧できるほか、同本部で500円で販売する。同本部Tel082(544)3399。(教蓮孝匡)

(2013年11月4日朝刊掲載)

年別アーカイブ