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米軍機騒音 広島で急増 21年度県集計 艦載機移転前の2.5倍

 広島県内で米軍機が原因とみられる騒音が急増している。県内の6測定地点で、「騒がしい街頭」に相当する70デシベル以上を2021年度に計9664回記録。米軍岩国基地(岩国市)への空母艦載機の移転完了後の18年度以降で最多となり、完了前の17年度から2・5倍に増えた。台湾海峡有事に備えた訓練の影響もあるとみられ、住民から不安の声が上がっている。

 中国四国防衛局が騒音測定器を置き、移転完了前からデータのある県内6地点の記録を県が集計した。地点別では、岩国基地を離陸する航空機の飛行ルート直下の大竹市阿多田島が5153回で最も多く、17年度の2・2倍になった。大竹市西栄は8・8倍の929回で増加率が最大だった。

 残る4地点も、廿日市市八坂公園1279回(2・9倍)▽北広島町西八幡原1097回(1・6倍)▽廿日市市宮島914回(4・2倍)▽江田島市沖美292回(3・3倍)―と軒並み増えた。

 また県に連絡のあった低空飛行の目撃件数は、21年度2522件。17年度の1・3倍となり、記録のある1997年度以降で最多だった。市町別では、訓練空域のある北広島町が最も多い1046件で、大竹市が1022件で続いた。ほかは廿日市市387件、広島市27件、三次市19件、江田島市11件、庄原市8件、安芸太田町2件の順だった。

 県国際課は「艦載機移転で騒音が大幅に増え、住民生活に多大な影響を及ぼしている」と説明。国に騒音被害の実態把握や解消に向けた財政措置を要請する。

 岩国基地は18年3月、厚木基地(神奈川県)から艦載機約60機の移転が完了。所属機はほぼ倍増し、極東最大級の航空基地となった。さらに、米軍は台湾海峡有事を念頭に戦闘機を臨機応変に各地へ派遣する訓練を繰り返しているとみられ、海兵隊と海軍の拠点の岩国基地にも空軍機の飛来が増えている。

 21年12月には米アラスカ州の空軍基地から12機のステルス戦闘機F35Aが飛来し、離陸直後に急上昇するなどの訓練を2週間近く繰り返した。同3月にも米ハワイ州の基地からステルス戦闘機F22ラプター6機が来て約1カ月間訓練した。

 市民団体「岩国基地の拡張・強化に反対する広島県住民の会」の坂本千尋共同代表(69)=廿日市市=は「米軍機が2機編隊で保育園上空を飛んだり、騒音でピアノのレッスンが中断されたりしたとの情報がある。穏やかな気持ちで暮らせない」と訴えている。(永山啓一)

(2022年5月21日朝刊掲載)

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