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原医研 デジタル組織標本公開 HPで100人分

 広島市南区の広島大原爆放射線医科学研究所(原医研)は20日、広島への原爆投下直後に犠牲者から採取された組織標本のデータベースをホームページ(HP)で公開した。被爆間もない時期の骨髄細胞の減少など放射線による急性症状が分かる資料で占領下に米軍が接収した後、1973年に日本に返還された。標本の劣化が進んでいたため、デジタル化した。

 原爆が投下された45年に死亡した被爆者100人分を公開した。犠牲者ごとに肺や肝臓、骨髄などの組織画像と、年齢や被爆地点、出血や発熱といった症状の経過を掲載する。肺に水がたまった状態や、腎臓が壊死(えし)した様子が分かるものもある。データは個人の特定ができないよう配慮したという。今後、データ数をさらに増やし、正常な組織の画像と比較できる機能も付ける。

 2020年にクラウドファンディングで資金を募り、約460万円が集まった。初期放射線による影響を示す資料として医療関係者の参考にしてもらう。平和学習への活用も願って、難しい用語には説明文を付けた。田代聡所長は「幅広い人に見てもらい、被爆の実相を知ってほしい」と話す。(下高充生)

(2022年5月21日朝刊掲載)

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