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非核の声を世界に 被害の理解深めて 広島サミット 被爆者ら提案期待

 2023年に日本である先進7カ国首脳会議(G7サミット)について、日本政府が広島市での開催を米国に提案する方向で最終調整していることを受け、広島の被爆者たちからは20日、核兵器廃絶のメッセージを発信する機会として開催を期待する声が上がった。各国の首脳に原爆被害をしっかりと理解してもらう取り組みを求める意見もあった。(明知隼二、川上裕、小林可奈)

 岸田文雄首相(広島1区)は22~24日に来日する米国のバイデン大統領に、広島市での開催を直接提案する方向で調整を進めている。広島県被団協の箕牧(みまき)智之理事長(80)は、初の被爆地開催について「実現すればうれしい」と歓迎する。

 G7の構成国のうち米国と英国、フランスの3カ国は核兵器を保有。カナダ、ドイツ、イタリアも欧米の「核同盟」でもある北大西洋条約機構(NATO)に加盟している。箕牧理事長は、ウクライナに侵攻するロシアが核兵器使用を示唆する現状を踏まえ「核兵器の非人道性と廃絶の必要性を感じてもらい、被爆地から世界へ向けて力強いメッセージを発してほしい」と願う。

 もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(77)は「広島開催が決定すれば、核兵器を否定する意思表示になる」と話した。保有国などが核軍縮を話し合う8月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議は協議の難航が予想されており、「核軍縮に向けた各国の意思統一が欠かせない。会議への前向きなメッセージにもなるはずだ」と期待する。

 「原爆被害を真剣に理解する機会にならなければ、広島開催の意味は乏しい」と指摘するのは、NPO法人ANT―Hiroshima(広島市中区)の渡部朋子理事長(68)だ。2016年に広島を訪問したオバマ米大統領(当時)が、原爆資料館(中区)の見学にわずか10分しか割かなかったことが今も悔やまれる。「広島開催を提案するなら、首脳が資料館の見学に十分な時間を割くよう交渉するべきだ」と日本政府に求める。

 広島市立大広島平和研究所の大芝亮所長(国際関係論)は、ウクライナ情勢を踏まえ世界で核拡散や核戦力の強化の懸念が高まる中、「広島でのサミットは、核兵器の使用も、使用するとの脅しも許されないとの規範を確認する機会になる」と外交上の意義を強調。共同声明などの成果に向けて「被爆国の政府として指導力を発揮するべき時が来ている」とした。

(2022年5月21日朝刊掲載)

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