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核被害 世界に発信/平和の大切さ伝えて 広島サミット決定 市民受け止め

 「被爆の実態を知ってもらう絶好の機会だ」「核兵器廃絶へのきっかけになってほしい」。2023年にある先進7カ国首脳会議(G7サミット)について、岸田文雄首相が広島市での開催を表明した23日、市民や観光客たちからは歓迎する声が相次いだ。ウクライナに侵攻したロシアが核兵器の使用を示唆する中、核兵器のない世界に向けた実りのある議論と成果を願った。(浜村満大、平田智士、高本友子)

 被爆地でのサミット開催は初めてで、核被害の世界への発信を願う声は多かった。広島への原爆投下後、しばらくして祖母が亡くなったという佐伯区の主婦井藤香代子さん(70)は「当時を語ることができる被爆者が年々減る中、広島で起きたことについて広く知ってもらういい機会になる」。

 核超大国の米国をはじめ、核兵器を保有する英国とフランスの首脳が被爆地に集うことになる。西区の田山隆敏さん(75)は「核兵器保有国の要人が原爆資料館を見て、使わないことはもちろん、持ってはいけないと感じ、核兵器廃絶への機運が高まってほしい」と期待した。

 観光で平和記念公園(中区)を訪れていた大阪市の自営業真杉祐佳さん(36)も「ロシア軍のウクライナ侵攻や北朝鮮のミサイル発射が起きている中、平和の大切さを世界へ伝えるには被爆地広島が適地だと思う」と強調。「各国の首脳には被爆者や市民と交流して、戦争や紛争をどう解決するか考えてほしい」と求めた。

 広島市の被爆体験伝承者を務める大河原こころさん(31)=安芸高田市=は「広島で起こったことを多くの海外メディアが取り上げるはずだ」と受け止める。福島県田村市出身で11年の東京電力福島第1原発事故の影響で避難した経験もある。「被爆者たちは放射線の被害や差別にも苦しんだ。どんな苦しみと生きてきたのかも伝える機会になってほしい」

 被爆地の衆院広島1区選出の首相はかねて「核兵器のない世界」の実現がライフワークだと公言してきた。平和記念公園で修学旅行生や海外の観光客たちをガイドしている東広島市の広島大4年池田風雅さん(21)は「各国の首脳が被爆地に集まるだけで終わっては意味がない。核兵器のない世界に向けて具体的な行動につなげてほしい」と求めた。

(2022年5月24日朝刊掲載)

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