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[2023広島サミット]被爆実態 今こそ直視を 首脳の具体的行動望む

 先進7カ国首脳会議(G7サミット)が23日、初めて被爆地広島で開催されることが決まった。「しっかり被爆の実態に向き合ってほしい」「首脳たちが核軍縮の方向を打ち出すべきだ」―。ロシアのウクライナ侵攻や核兵器使用を示唆する発言などで核軍縮に逆風が吹く中、被爆者や平和活動の関係者たちからは期待と注文の声が上がった。(明知隼二、余村泰樹、小林可奈)

 「大国の大統領や首相が広島を訪れるのは、被爆者にとって朗報だ」。広島県被団協の箕牧(みまき)智之理事長(80)は、そう歓迎する。G7サミットの広島開催は、核兵器保有国である英国とフランスの首脳が初めて被爆地を訪れることも意味する。「原爆資料館で命を落とした子どもたちの写真や焼け焦げた着衣を見れば、何か重いものを感じ取れるはずだ。訪問をただのセレモニーで終わらせないでほしい」。各国首脳が原爆被害の実態に触れる機会になるよう願った。

 もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(77)は「核兵器使用の危機が高まっているからこそ広島開催を求めていた」と評価した。ただ、23日の日米首脳会談では、米国の核兵器と通常兵器で日本防衛に関与する「拡大抑止」の強化を打ち出した。佐久間理事長は「核兵器の使用がどれほど悲惨な結果をもたらすか。特に保有国首脳には直視してほしい。核兵器や軍事力に頼らず、話し合いで解決する大切さに気付くはずだ」と話した。

 被爆者との交流会を継続的に開いている広島市中区のカフェ「ハチドリ舎」店主の安彦恵里香さん(43)は、2016年のオバマ米大統領(当時)の広島訪問を踏まえて注文する。オバマ氏の原爆資料館の見学は短く、被爆証言を聞く時間も設けなかったが、原爆慰霊碑前でのスピーチは世界で注目された。「広島の『平和』イメージを利用された感じがあった。G7首脳が来るなら核の脅威や平和を言葉で語るだけではなく、ロシアも含めていかに核軍縮を進めるのか、具体的な流れを示して」と求めた。

 「若者たちと接する機会も設けてほしい」と願うのは、広島市立大3年赤畑利奈さん(20)=中区。中学3年の時、オバマ氏を迎えた平和記念公園での行事に参加した。自分が暮らす広島を「被爆地」として国際的な視点で見直すきっかけとなったという。「被爆者の経験や思いを伝え続けるのは、私たち若者の役割。原爆の惨禍を繰り返さないためのバトンを次代につなぐ契機にもなる」と期待した。

(2022年5月24日朝刊掲載)

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