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患者搬出や避難指示課題 島根原発で防災訓練 2県6市 情報共有手間取る

 島根県が5日、中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)の事故に備え鳥取県、両県の6市などと実施した原子力防災訓練は、病院、学校の避難訓練と通信訓練がメーンだった。訓練を通じ、災害弱者の安全な避難に向けたハードルの高さや、自治体間の情報共有の難しさが浮かび上がった。(樋口浩二、明知隼二、秋吉正哉)

■災害弱者の避難

 鹿島病院(同)の訓練では、患者役の県職員5人が病院職員によって一見スムーズに搬出された。だが入院患者169人のうち、約140人はほぼ寝たきり。「どうやって運ぶのか。大きな課題は残ったまま」。下瀬宏事務部長(58)は話した。

 児童・教員計101人が屋内退避訓練に参加した佐世小(雲南市大東町)。11時20分の予定だった退避の指示は約10分遅れた。同小に指示を伝える市危機管理室は「(事故対策拠点の)オフサイトセンターからのファクス送信が遅れ、学校への指示も遅れた」とする。

 飯塚良治校長(56)は「保護者への連絡でも通信手段の確保が重要」とし「あらゆるケースを想定して準備を進める」と強調した。

■情報共有

 「避難と屋内退避を早急に指示する」。島根県の溝口善兵衛知事は、福島第1原発事故を受け、3月に拡充した同センターのテレビ会議システムを使い、両県と6市、国に伝えた。両県と松江市、国だけを結んでいた旧システムを更新し、首長間の意思疎通は容易になった。

 一方、両県と6市、国、自衛隊などの担当者で組織した、住民安全班▽広報班▽総括班―の3班の作業は一部手間取った。安全班の場合、県、市への効果的な指示に向けて情報を集約し関係機関と調整するのが役割だが、データ収集だけにとどまった。

 「作業の流れと各自の役割が不明瞭で次に何をするのか分かりにくかった」。住民安全班で参加した鳥取県西部総合事務所商工労働課の佐伯重美課長は語った。

(2013年11月6日朝刊掲載)

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