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社説・コラム

中国経済クラブ 講演から 岸田内閣の評価と課題 ジャーナリスト・共同通信客員論説委員 後藤謙次氏

ウクライナ ぶれない対応

対中政策 国民生活に直結

 中国経済クラブは25日、広島市中区の中国新聞ビルで講演会を開いた。ジャーナリストで共同通信客員論説委員の後藤謙次氏が、「岸田内閣の評価と課題」をテーマに講演。岸田文雄首相(広島1区)はウクライナ情勢への対応で成功しているとし、今後は対中国政策が鍵になると展望した。要旨は次の通り。(河野揚)

 外相時代に米オバマ大統領(当時)を原爆ドーム(広島市中区)近くで案内したのが岸田首相だった。23日、広島に来年の先進7カ国首脳会議(G7サミット)を誘致すると明言し、巡り合わせを感じている。

 岸田政権の支持率は高く、不支持率が低い。安倍政権も支持率が高値安定だったが、森友、加計学園問題で急落する時もあった。好き嫌いがはっきりするのが安倍、菅政権だった。

 菅義偉前首相が2020年9月に自民党総裁になり、岸田首相の逆転劇が始まった。無役になり、強く目覚めた。麻生太郎副総裁から、古賀誠元幹事長と縁を切るよう言われ、岸田派(宏池会)の政治資金パーティーの招待状を古賀氏に出さなかった。

 ポストが人をつくるというが、岸田首相はまさに首相ポストが一番フィットする政治家という気がする。野党に追及されても、大きくうなずく。野党側の提案も組み入れるため、攻める隙を与えていない。

 4年8カ月の外相経験がプラスに働いている。ロシアがウクライナに侵攻すると、米国や欧州連合(EU)と経済制裁に踏み切り、プーチン大統領にも制裁を加えた。マラソンで例えると、先頭グループからは外れないが、トップランナーにはならない外交方針を確立した。大きくぶれない対応が国民に安心感を与えている。

 首相官邸では「チーム岸田」が早くから機能していた。東京・開成高の後輩で、16年の熊本地震で現地入りしていた嶋田隆秘書官、ずっと岸田首相に秘書として仕えた山本高義秘書官が官邸に入り、非常にうまく回っている。

 次の課題は中国対策だ。輸出と輸入の相手国の1位で、中国なしで経済が成り立たない。中国を敵視する米バイデン政権の影響もある。中国とどう向き合うかが国民生活に直結する。

 来年のサミット開催では「そろそろ決める時期では」と岸田首相に言った際、「まだ納得してくれない国がある」と。英国とフランスだった。それを一変させたのがウクライナ情勢だ。反核の思いが全世界に広がっている。

 参院選は野党が一本化できず、限られた選挙区で苦戦する程度。安定政権を維持できるのではないか。選挙後の党役員人事は、安倍晋三元首相(山口4区)が強い不満を持っている現執行部を残すかどうかと、次の首相候補をどう処遇するかがポイントだ。

 自民党内には年末か来年初めに衆院選をやっていいという声がある。気を抜いている間に岸田首相は砥石(といし)で刀を研いでいるかもしれない。

ごとう・けんじ
 早稲田大法学部卒。73年共同通信社入社。政治部長、編集局長などを経て07年に退社後は、ジャーナリストとして報道番組に出演。現在は共同通信客員 (2022年5月26日朝刊掲載)

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