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被爆後の日常 記録半世紀 「妻の貌」来月全国上映

■記者 道面雅量

 広島市佐伯区のアマチュア映像作家川本昭人さん(82)の代表作「妻の貌(かお)」が7月から、東京など各地で劇場公開される。映画評論家の佐藤忠男さん(78)らが「配給元」を買って出る異例の支援で実現した。

 「妻の貌」は、川本さんが半世紀にわたって撮りためた妻キヨ子さん(83)の日常の記録。被爆の影響とみられる甲状腺がんや貧血に苦しみながら、家事や義母の介護に尽くし、子や孫の成長に目を細める姿を淡々と描く。ライフワークとして新たに撮影した分の追加、改編を重ねてきた。

 著書「日本映画史」などで知られる佐藤さんは、作品を「何でもない日常の中に被爆の問題が静かに流れている。アマチュアだからこそ撮れた傑作」と高く評価する。長年、各地のアマチュア映像祭で審査員を務め、常連の川本さんの作品に注目してきた。

 2007年、川崎市に開館した市アートセンターのアドバイザーになったのを機に「こういう作品の上映こそ公共劇場の役割」と試写会を開き、同館を拠点に上映委員会をつくって全国配給に乗り出した。

 7月4日から広島市西区の横川シネマで先行公開。東京、横浜、大阪などの約20館が上映を予定している。川本さんは「私の分身のような作品。多くの人に見てもらえるのは本当にうれしい」と喜んでいる。

(2009年6月18日朝刊掲載)

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