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ブラジルの被爆者 漫画に 広島の支援者に現地から届く

 ブラジルに暮らす被爆者の証言を基に、ヒロシマを伝える漫画が現地で刊行された。このほど広島の支援団体に、サンパウロの被爆者から現物が届いた。

 「PROJETO HIBAKUSHA」(被爆者プロジェクト)と題した160ページ。サンパウロ州ソロカバ大でジャーナリズムを教えるギリエルメ・プロフェタ教授が取材して脚本を書き、絵はリジア・ザネラさんらが担った。

 プロフェタさんがヒロシマ取材を決意する場面を描いた序章に続き、1章で在ブラジル被爆者を長年まとめてきた森田隆さん(98)の被爆体験を紹介。2章は黒い雨を浴びた事実を大人になって知った渡辺淳子さん(79)の証言を盛り込んだ。

 3章はプロフェタさんが被爆70年を前に広島を訪れ、1945年8月6日に思いを致す場面を忠実に描いている。取材風景や心象を通し、被爆の記憶に迫る構成だ。「ヒロシマはあらゆる手段で何度でも伝えられるべき出来事。人類が悲劇を繰り返さないため、誰もが自分の問題として受け継ぐ必要がある」とプロフェタさんは力を込める。

 渡辺さんたちはコロナ禍前、学校などに出向いてポルトガル語で証言活動をしてきた。しかし戦後ブラジルに渡って覚えた言葉では惨状や思いが十分伝えられず、もどかしかったという。「漫画は私がうまく言い表せないことまで表現してくれた。核兵器が使われればどうなるか。漫画を通じて考えてほしい」。証言活動に活用する予定でいる。

 漫画を受け取った在ブラジル・在アメリカ被爆者を支援する会の田村和之代表世話人は「多様な手段でヒロシマが伝えられることはとても重要」とブラジルでの継承を願う。原爆資料館(広島市中区)にも寄贈され、情報資料室で閲覧できる。(森田裕美)

(2022年5月30日朝刊掲載)

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