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被爆で緑内障 高リスク 放影研など 線量多いほど発症

 広島、長崎の原爆被爆者は、浴びた放射線の量が多いほど緑内障を発症するリスクが高いことが6日、放射線影響研究所(放影研、広島市南区)と広島、長崎両大の共同研究で分かった。米放射線影響学会の学術誌に論文を発表した。

 緑内障は血流の悪化などで視神経が圧迫されて視野が狭まる病気で、日本人の途中失明原因の1位。水晶体が濁る白内障の発症リスクと被爆線量に相関関係があることは分かっており、緑内障も同様の関係が示された。

 共同研究チームは2006~08年、放影研が追跡調査する被爆者2699人のうち、協力要請に応じた1589人に問診と眼科検査をした。内訳は爆心地から2キロ以内にいて5ミリシーベルト以上被爆した868人、3キロ以遠にいて放射線の影響をほぼ受けていないと考えられる721人。

 緑内障のうち日本人が最もなりやすい「正常眼圧緑内障」の発症者は2キロ以内で134人、3キロ以遠は92人いた。性別や被爆時年齢、糖尿病の有無などを踏まえた解析では、2キロ以内で千ミリシーベルト被爆した人は、3キロ以遠の人に比べてリスクが1・31倍高かった。

 2キロ以内の人は被爆線量が多いほど発症率も高く、5~200ミリシーベルト未満では11・2%だったが、2千ミリシーベルト以上では19・7%に上がった。研究に参加した放影研の錬石(ねりいし)和男非常勤研究員(63)は「放射線が網膜の血流を悪化させたのが原因とみられる。発症メカニズムにも迫りたい」と話した。(田中美千子)

(2013年11月7日朝刊掲載)

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