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平和公園 修学旅行生戻る 資料館や周辺旅館 コロナ前の8割 ヒロシマ学ぶ場 存在感

 広島市中区の平和記念公園に修学旅行生の姿が戻ってきた。4月に公園内の原爆資料館を団体で訪れた小中高生は3年ぶりに1万人を突破し、新型コロナウイルス流行前の2019年同月比で8割まで回復した。感染拡大の影響で一時、訪れる児童、生徒も激減したが、今春の修学旅行シーズンはまん延防止等重点措置などに伴う移動制限もかからず、原爆被害の実態や平和を学ぶ場として再び存在感を示している。(平田智士)

 今月下旬、北九州市の照曜館中の3年生約50人が慰霊碑に祈りをささげていた。例年の旅行先はオーストラリアだが、20年は熊本、21年は大分へ変更した。今年は新幹線で広島へ。五十(いそ)棲(ずみ)錠二校長(63)は「海外はまだ難しい。今こそ生徒たちに平和を学んでほしいと思い、ルートに組み込んだ」と話す。この日はさまざまな制服の子どもたちが公園内を歩いていた。

 修学旅行者の回復は原爆資料館の来館状況が物語る。今年4月に原爆資料館を訪れた小中高生は1万22人。21年4月の4・3倍に当たり、コロナ前の19年4月の1万2111人と比べて82・8%まで戻した。一方、今年4月の団体数は97団体で19年と比べ4割弱となっているが、1団体当たりの人数が増えているとみられる。春の修学旅行が本格化する5月は29日現在、4万1242人(421団体)が入館している。

 原爆ドーム(中区)そばの旅館「相生」は5月の大型連休明けから連日、関西や関東の子どもたちでにぎわっている。女将(おかみ)の小田富貴子さん(78)は「この2年間はキャンセルが相次いだが、修学旅行の宿泊客はコロナ流行前の7~8割まで回復している」と喜ぶ。

 旅行大手JTBの広報室によると、これまでも広島を訪れていた学校に加え、海外や沖縄、北海道など遠方に行っていた関西や九州、四国の学校の一部が広島に行き先を変更している。「旅先で子どもたちが新型コロナに感染した場合、いざとなれば保護者が乗用車で迎えに行けるなど対応が取りやすい」との理由があるという。

 広島への回帰は修学旅行の秋シーズンに当たる21年10~12月にも見られた。特に新型コロナの第6波に入る前の11月、6万2426人が資料館を見学。コロナ前の19年11月と比べても10・9%増となった。市内の観光施設の関係者は今年の下半期、さらに盛り返すことを期待している。

 修学旅行などの誘致を進める山口芳明・市観光プロモーション担当課長は先進7カ国首脳会議(G7サミット)の広島開催決定を念頭に「平和学習の大切さを広く伝えるべき時。広島への来訪を呼びかけていきたい」と力を込める。

(2022年5月31日朝刊掲載)

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