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亀ケ首試射場跡 模型に 倉橋 観光ガイド柳井さん再現 「稼働時をイメージして」

 呉市倉橋町の観光ボランティアガイド柳井敏弘さん(81)が、同町にある戦争遺構「亀ケ首試射場跡」の昭和初期の姿を模型で再現した。戦後77年たった今、現地には劣化した建物の一部が残るものの、草木に覆われて全体を見渡すことはできない。現地の案内役も担う柳井さんは「稼働していた当時をイメージする助けになればうれしい」と話す。(仁科裕成)

 同試射場は、日露戦争が始まる4年前の1900(明治33)年、旧海軍によって倉橋島東端に整備された。兵器開発の重要な施設として、戦艦大和に搭載された46センチ砲の発射実験も行われたとされる。戦後に進駐軍によって破壊されたが、れんが造りの測定所跡など一部が残る。2020年には日本遺産の構成文化財に登録された。

 模型は縦約70センチ、横約100センチ。呉海軍工廠(こうしょう)が作成した配置図や、当時の写真を基に設計した。厚紙や障子紙で山の起伏や、発射の衝撃を防ぐために築かれた土手などを立体的に再現。現在は残っていない大砲の砲座や、砲身を運んだクレーン、発射速度を計測する機器なども配置した。

 退職後、姫路城などの模型も作ってきた柳井さんが、半年を費やした労作。現地へは海路での見学ツアーが不定期に催されており、模型を図解に活用して分かりやすく案内するパネルも作った。「模型と実際の風景を照らし合わせ、島に刻まれた戦争の歴史を感じてほしい」と話している。

(2022年6月1日朝刊掲載)

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