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連載・特集

第10回新県美展 大賞の輝き <下> 映像 島田拓空也(たくや)さん(22)=三原市出身

戦争体験つなぐ家族の姿

 関西学院大のメディア情報学科で学ぶ4年生。ドキュメンタリー「戦後77年 祖父母と辿(たど)る戦争の記憶」は、映像部門で初の大賞を射止めた。

 共同制作者で同学年の大路真由さん(21)が、自身の祖父母から戦争体験を聞く。その様子を約10分間にまとめた。審査員から「家族の記憶を日常的に記録することの大切さを示した」と評価を受けた。

 祖父は当時、大津陸軍少年飛行兵学校に通っていた。祖母は戦争で父を亡くしていた。作中、大路さんと対話する祖父は「特攻隊になるのは夢だった。そういう教育だった」と振り返り、祖母は「当時のことをもっと母に聞いておけばよかった」と悔やむ。

 「記憶の継承と聞けば実行するのは難しいと感じるかもしれない」と島田さん。「でも、身近な人との普段の会話が継承になる」と力を込める。言葉をありのまま伝えるため、脚色をしていないか2人で何度も確認した。「自然な表情を収められたのは大路さんのおかげ」と感謝する。

 大学入学を機に、授業の一環で映像を撮り始めた。社会課題を問おうと、現在は自主制作を進める。「受賞は励み。将来はドキュメンタリーの映像作家になりたい」と思い描く。(福田彩乃)

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 第10回新県美展の中央展(広島県、中国新聞社など主催)は11~26日、広島市中区の広島県立美術館で開かれる。

(2022年6月2日朝刊掲載)

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