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西平和大橋事故 原因は道路幅? 前後より狭く・歩道も狭く・ガードレール設置も困難 広島市、抜本策打ち出せず

 広島市中区の西平和大橋で、車の事故が相次いでいる。前後の道路に比べ橋の幅が狭くなる構造が原因とみられ、改善を求める声が上がっている。ただ、架け替えや拡幅には多額の支出と時間が見込まれるため、管理する市は抜本的な対策を打ち出せないでいる。(川上裕、川村正治)

 西平和大橋で4月30日、10代男性の軽乗用車が縁石を乗り越えて歩道の自転車を後ろからはね、自転車に乗っていた50代男性が約9メートル下の本川に転落する事故が起きた。50代男性は約20分後に救助されて無事だったが、広島中央署は「被害者が亡くなってもおかしくなかった」と危ぶむ。

 昨年12月19日未明には、世界的彫刻家であるイサム・ノグチがデザインした欄干に10代男性の乗用車がぶつかり破損させる事故があった。このほか、車輪が縁石に接触し、外れたホイールカバーが歩行者をかすめて本川に落ちる事案なども発生している。市は縁石側面をくりぬいて反射材を設けているが、タイヤがこすれた跡が縁石に多く残る。

デザインも考慮

 片側2車線の西平和大橋の車道の幅は11・6メートル。平和大通りの標準的な幅16メートルより狭い。車で橋に近づくと車幅が狭くなるため、縁石をかすめるように走行する車も多い。市は縁石の反射材を増やす対策などを検討しているが「ノグチのデザインとの調和も考えないといけない」と説明する。

 橋の交通面の課題は車道の狭さだけではない。両端の歩道の幅は各1・6メートル。狭く、朝夕の混雑時などに歩行者と自転車がぶつかりそうになるケースも見られる。車道と歩道を隔てる縁石の高さは約23センチで国の基準は満たすが、安全性を高めるガードレールや防護柵は景観やスペースの面から設置が難しい。

 よく橋を歩く広島市西区の会社員井上幸和さん(61)は「後ろから来た自転車にぶつけられそうになることがしょっちゅうある。自転車や歩行者とすれ違うときは車道の車と当たりそうで怖い」と、隣に歩道橋を設置するよう求める。

専用橋の設置も

 市は2019年、約300メートル東にあり、同じイサム・ノグチ氏が欄干をデザインした平和大橋の北隣に、歩行者と自転車の専用橋を設けた。安全性が高まり、大橋では歩道を分離した分だけ車道を広くする工事も進む。

 ただ、専用橋には約13億円の費用と約5年の工期がかかった。市道路計画課の本畝学課長は「より人通りが多い平和大橋の対策をした」と説明。西平和大橋の架け替えや歩道橋の新設は費用などの詳細な検討が必要で、現時点で具体的な計画はないという。

 市は平和大通りの全線に自転車専用道の整備を進めている。自転車で快適、安全に移動できる街づくりのシンボルロードにする方針だが、現在の計画では専用道は橋の手前で途切れる。車、自転車、歩行者が安全に通行できる施策の検討に本腰を入れる時期に差しかかっている。

西平和大橋
 広島市中区の本川に架かる全長約100メートルの鉄筋コンクリート製の橋。1952年、米国からの対日援助物資を売った資金で、国の直轄事業として平和大橋(広島市中区)とともに造られた。欄干は彫刻家イサム・ノグチ(1904~88年)のデザイン。2019年に欄干の補修が始まり、当初のコンクリート打ち放しの質感が戻った。

(2022年6月3日朝刊掲載)

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