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首相、街頭より外交 参院選中 1週間不在も 元外相 手腕アピールか

 岸田文雄首相(広島1区)は今月、外国訪問を重ねる。10日からアジア安全保障会議でシンガポールへ、下旬は先進7カ国首脳会議(G7サミット)でドイツへ。参院選の22日公示が確実視される中、月末にスペインである北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に顔を出す検討も始めた。国政選挙の期間中に政権与党トップが長く日本を離れるのは珍しい。元外相として得意分野で手腕を示したいようだ。(樋口浩二、口元惇矢)

 アジア安全保障会議(10、11日)とドイツサミット(26~28日)は長期化するロシアのウクライナ侵攻に対抗する国際協調に加え、核兵器・ミサイル開発を進める北朝鮮への対応などがテーマとなる見通しだ。

 昨年10月就任した首相にとっては各国首脳と関係を築き、被爆地選出の政治家としてライフワークとする「核兵器のない世界」や平和を訴える好機ともなる。

 ここで焦点となるのは参院選の日程だ。政府、与党は6月22日公示、7月10日投開票で最終調整に入った。選挙中とはいえサミット出席は世論の理解が得やすいが、日本が非加盟のNATO首脳会議(6月29、30日)にまで足を延ばすことには賛否が割れそうだ。

 NATOの懸案はロシア対応だ。首相はかねて欧米との共同歩調の重要性を説く。ただドイツ、スペイン歴訪となれば、空路移動を含め1週間程度、首相が日本にいない事態となる。

 国政選挙ではこれまで、時の首相が与党候補者の応援で全国を飛び回ることが多かった。前回2019年の参院選では当時首相の安倍晋三氏(山口4区)が全17日間、東京都内や東北、九州、中国地方などの重点区を行脚して、街頭演説でマイクを握るなどした。

 今夏の参院選を巡っては政府、与党内に、岸田内閣の支持率も比較的高いことから「元外相の手腕の見せどころ。歴訪は露出度アップで選挙で有利に働くだろう」との楽観論がある。一方で「有権者から参院選軽視とも受け取られかねない」との声も漏れる。

 09年衆院解散・総選挙での旧民主党への政権交代は、07年参院選での自民党の大敗が布石だった。岸田首相の外国歴訪が、今夏の政治決戦にどのような影響を及ぼすか注目される。

(2022年6月6日朝刊掲載)

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