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原発寄付金1億円余で複合施設着工 松江の自治組織 地元から疑問の声も

島根3号機工事 中電からの1億円余

 中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)の地元自治組織が、建設中の3号機の工事に伴う中電からの寄付1億円余りを使い、産直市やレストランを併設した複合施設の建設に着手したことが8日、分かった。過半数の住民の同意で決まった施設の建設。地元には、福島第1原発事故の後も、中電の寄付で地域振興を図ることへの疑問の声も上がっている。(樋口浩二)

 福島の事故以来、島根原発の地元で中電の寄付を原資に施設が建設されるのは初めて。

 原発から3~5キロの講武地区にある自治組織「講武自治会」によると2013年10月、地区内で敷地約3千平方メートルの造成を開始。14年5月に平屋数百平方メートルの施設を着工し、同8月の完成を目指す。

 施設内には、住民の交流スペースも設ける計画。総事業費約1億1700万円には全額、中電の寄付を充てる。

 自治会は前身の講武自治協会(約500世帯)時代、3号機の送電線鉄塔の建設工事(07年3月~10年12月)を受け「地域振興への協力」との名目で中電に寄付を要請。11年2月までに約1億5千万円を受け取った。

 旧自治協会は12年3月、地元住民やJA関係者で寄付の使途を探るプロジェクト会議を発足。施設の建設を決めた後の13年6月、事業化のため法人格を持つ講武自治会に移行したが、加入者は地域住民の5割強にとどまった。複数の住民によると、福島の事故以来、寄付への異論が強まったという。

 自治会の桑谷充男会長(65)は「議論の過程で寄付の活用への反対はごく少数だった」と話す。「送電線の騒音や景観悪化と共存しており、寄付を基に活性化を進めるのは当然」と説明する。

 一方、自治会への移行に賛同しなかった講武地区の60代農業男性は「原発の立地と表裏一体の寄付で振興を図る発想を改める時」と言う。「3号機の稼働議論が始まった場合、地元が物を言えなくなり、稼働が既成事実化されるのが不安」と話している。

島根原発の立地に伴う寄付
 3号機の増設計画に伴い、中電はこれまでに松江市鹿島町と隣接の島根町に計約52億円を寄付した。福島第1原発事故後も、アワビの種苗を育成する鹿島・島根栽培漁業振興センター(同市鹿島町)に3年で計9千万円を寄付。寄付は、電気料金を決める算定方式でコストの一部となるが、中電は「積極的に公表しない」方針。

(2013年11月9日朝刊掲載)

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