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首相 NPT会議出席へ 歴代初 8月1日演説 有力 「核なき世界」へ決意表明

 岸田文雄首相(広島1区)が8月に米ニューヨークの国連本部で開かれる核拡散防止条約(NPT)再検討会議に出席する方向で調整に入ったことが10日、分かった。政府関係者によると、各国代表がそれぞれの立場を表明する開幕日の8月1日に演説する案が有力となっている。被爆地選出の首相として掲げる「核兵器のない世界」に向け、取り組みを前進させる決意を訴える見通しだ。(樋口浩二)

 NPTは核兵器保有国と非保有国が核軍縮の道筋を探る国際会議で、通常は閣僚級や政府機関代表が出席する。日本の首相が出席すれば初めてとなる。「核なき世界」の実現をライフワークと公言する首相はかねて、核保有国を交えた議論を重視し、2015年の前回会議には外相として参加。地元広島の原爆被害などを伝えた。

 演説では、NPT加盟国でもあるロシアが核兵器で威嚇し、NPT体制が揺らいでいるとの危機感を表明する見込み。保有国に核軍縮の義務を課すNPTの原点に国際社会が立ち返るよう呼び掛けるとみられる。

 議長として広島市で23年に開く先進7カ国首脳会議(G7サミット)や、年内に世界の政治指導者を広島に集める「国際賢人会議」を見据え、各国首脳が被爆地を訪れる意義も強調する見通しだ。

 NPT再検討会議には、岸田政権で核軍縮・不拡散問題などを担う被爆2世の寺田稔首相補佐官(広島5区)も同行する。8月26日までの会期中、合意文書の作成に向けて各国と調整を重ね、被爆国政府として主導的な役割を果たす考えだ。

 再検討会議は原則、5年に1度開かれる。00年の会議で「核兵器廃絶の明確な約束」に関する合意が交わされるなど核軍縮に踏み出した時期もあったが、近年は議論が停滞。前回15年はイランの核問題などを背景に交渉が決裂し、合意文書を採択できなかった。当初20年に予定された会議は新型コロナウイルス禍で4度延期され、今夏の開催となった。

核拡散防止条約(NPT)
 1970年に発効し、191カ国・地域が加盟する。米国、ロシア、英国、フランス、中国に核兵器の保有を認める一方、核軍縮の義務を課す。5年に1度、条約の運用状況を点検する加盟国間の再検討会議を開催。各国の外交団に加え、広島、長崎の被爆者や市民団体も参加する。

(2022年6月11日朝刊掲載)

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