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米の艦載機移転 増加か 給油機の機数増/岩国の通信所再使用方針 

自衛隊空域でも訓練? 騒音被害地域 広がる恐れ

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)から米海兵隊岩国基地(岩国市)へ移転する空中給油機の機数増と、米軍祖生(そお)通信所(同市)再使用の方針が、山口県と岩国市に対する国の説明で明らかになった。米空母艦載機の移転内容の変更に加え、飛行訓練による騒音の激増と被害地域拡大の可能性を意味しており、注視が必要だ。(編集委員・山本浩司、岩国総局・野田華奈子、堀晋也)

 まず空中給油機の機数の推移を見てみたい。日米特別行動委員会(SACO)で空中給油機KC130の岩国移転に合意したのは、1996年である。当時、普天間の同型機は12機だった。

 米会計年度ごとの「海兵隊航空計画」の2007年度版にも、計画が作成された06年当時の同型機を12機と表記。08年度から10年度第2四半期(10年3月末)までに、全機新型に更新する計画を明らかにしている。

61機になる可能性

 しかし同計画の10年度版(09年作成)では、普天間の機数をいったん9機と表記。翌11年度第1四半期(10年12月末)までに定数を15機に増やすとしていた。機数減少は、普天間から本国の機種転換訓練に向かう機体があったためとみられる。

 計画通りなら、3年前には普天間の機数は15機になっていたのだが、国はこれまで明らかにしてこなかった。福田良彦岩国市長は「正直、釈然としない」という。

 強い不信感を抱かざるを得ない。これと同じことが艦載機移転でも起きる公算が大きいからだ。

 12年3月に艦載機の陸上基地、米海軍厚木基地(神奈川県)の電子戦機4機が、国外の部隊として初めて新型機に更新された際、配備機数が6機に増えた。空中給油機の例を当てはめると、岩国へ移転してくる艦載機は合意時点の59機から61機になるとみて間違いない。

 加えて艦載の全てのジェット機は移転合意後、より騒音が大きい最新鋭機に更新されている。さらに岩国市側の要望で、厚木に移転予定の海上自衛隊機17機は岩国にとどまることになっている。

 岩国基地周辺自治体は広島、山口の県境を越えて結束し、騒音の広がりを表した等高線「コンター」の提示を国に求めることが急務だ。

 一方、祖生通信所の再使用は、中国地方だけでなく広い範囲の住民に大きな影響を与える危険性をはらんでいる。

 防衛省担当者は岩国市に対し「空母艦載機の日本海と四国沖の自衛隊訓練空域の使用について協議中だ。空域の効率的、安全な運用を図るため、米軍機と岩国飛行場との通信が必要となる」と再使用の理由を説明した。

 これはつまり艦載機のための訓練空域は設定できなかったということだ。そのため、九州北部日本海上空の「F区域」と、九州東側太平洋上の「L区域」の既存の米軍訓練空域を、自衛隊訓練空域まで広げる計画が進んでいるとみていい。

 海上保安庁発行の「日本近海演習区域一覧表」などを見ると、両区域とも、海面から高度無制限まで、航空機による空対空と空対水の射撃訓練が実施されると説明されている。さらに自衛隊用の訓練空域が隣接しており、艦載機訓練にはうってつけだ。

 このことから艦載機の陸上目標攻撃訓練用の空域も、設定できていない可能性が見て取れる。

「市は影響注目を」

 現在、米軍機は中国地方北部の「エリア567」で同様の訓練を実施している。多くの住民が騒音に悩んでいるのだ。

 新しい訓練空域が設定できなかったことで、艦載機が「エリア567」で訓練をすれば騒音は想像を超えるものになる。また、空域の広さが機数増に見合わず、現在使用されている関東地方の空域が継続利用されれば、この空域と厚木基地周辺の騒音の軽減は望めない。

 「岩国基地の拡張・強化に反対する広島県西部住民の会」の坂本千尋事務局長は「岩国市は岩国基地周辺住民への騒音の影響に注目してほしい。基地を飛び立った所属機、空中給油機と空母艦載機の訓練場所とその内容についても注視する必要がある」と指摘する。

(2013年11月10日朝刊掲載)

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