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連載・特集

[G7サミット ヒロシマへ 期待と注文] 湯崎英彦・広島県知事 核兵器廃絶へ連携模索(2023広島サミット)

  ―来年に広島市である先進7カ国首脳会議(G7サミット)に合わせ、各国首脳と被爆者との対話実現を岸田文雄首相(広島1区)に直接働きかけた意図は。
 首脳たちに平和の問題を深く考えてもらう土台として、被爆の実態に触れてほしいからだ。首相も強い思いがあると感じている。

一つでも前へ

  ―ロシアが核兵器で国際社会を脅し、北朝鮮も核・ミサイル開発を進める中、被爆地でのサミット開催は局面を変えられますか。
 原爆を一つ使えば10万人単位の人が亡くなることが、広島に来ると理解できる。核兵器の使用は絶対にあってはいけないとより強く思ってもらえると思う。長期的な視点で核兵器をなくすため、一つでも二つでも前に進められたらいい。

  ―県は「ひろしまイニシアチブ」を掲げ、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に続く目標に核兵器廃絶を盛り込む活動を展開しています。賛同を広げる好機になりますか。
 サミットはすごく大きなイベントで、注目が集まる。われわれの活動と連携できるのか、連携することでどのようなインパクトを生めるのか、検討する必要がある。

  ―来年度には核兵器廃絶を目指す各国政府関係者による「フレンズ会合」の開催も目指していますね。
 世界のメディアが集まるサミットに合わせ、会合ができるのか、考えたい。

  ―核軍縮のほかのテーマでは、どのような議論を期待しますか。
 地球温暖化や食料不足の問題を含め、世界の安定のために建設的なアクションが生まれたらいい。

 例えば、大崎上島町では石炭火力発電所から出る二酸化炭素(CO₂)を有効活用する研究が進んでいる。ロシアの影響で化石燃料の供給が不安定になっている状況で、石炭火力のCO₂排出を制御できればエネルギーの安定供給に寄与できる。こうした選択肢を首脳に認識してもらう機会があると、うれしい。

魅力伝えたい

  ―経済波及効果を県全体に広げるために、どう取り組みますか。
 広島の象徴的な場所で首脳たちが並ぶシーンが何度も各国の映像で流れる。どこでその絵をつくるのか、県として外務省に提案していきたい。インフラ整備もある程度必要。道路や通信インフラ、案内標識など今からどうするべきか検討する。多くの海外メディアも来る。原爆だけでなく、広島の文化や歴史、食などの魅力を立体的に伝えたい。 (聞き手は永山啓一)

ゆざき・ひでひこ
 1990年、通商産業省(現経済産業省)に入省。米州課長補佐、米投資会社への出向などを経て2000年に退職。同年に通信会社を設立し、副社長を務めた。09年に広島県知事選に初当選し、現在4期目。広島市佐伯区出身。米スタンフォード大経営学修士課程修了。56歳。

(2022年6月12日朝刊掲載)

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