×

連載・特集

シンポ「戦争の記憶―ヒロシマ/ナガサキの空白」 7月18日 オンライン開催 吉永小百合さん原爆詩朗読も

 広島市立大広島平和研究所と中国新聞社、長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA)は7月18日午後1時半から、シンポジウム「戦争の記憶―ヒロシマ/ナガサキの空白」をオンラインで開催する。

 ウクライナに侵攻したロシアが「核のどう喝」に及ぶなど、核兵器使用は差し迫った危機となっている。かたや米軍による原爆投下から今年で77年を数える現在も、核兵器で徹底的に焼き尽くされた広島と長崎の被害実態には大きな「空白」があり、解明への努力が続く。体験と教訓を次世代に継ぐ上での課題とは―。本紙記者と研究者が議論する。中国新聞創刊130周年を記念し、俳優の吉永小百合さんによる原爆詩の朗読映像も放映する。(金崎由美)

写真収集などの試み報告

 3人が報告者として登壇する。本紙の水川恭輔編集委員は、2019年から続ける連載「ヒロシマの空白」の取材経験を踏まえて語る。広島市による原爆犠牲者数の調査や原爆供養塔の身元不明の遺骨を通して、原爆被害の全容が今なお未解明の「空白」である現状と背景を解説。被爆前と、壊滅後の市内を捉えた写真を収集するなどして空白を埋めようとしている試みを紹介する。

 長崎でも被爆前の写真を掘り起こして公開する努力が進む。国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館からの委託で事業を担当するRECNAの林田光弘特任研究員は、約6千枚を収集してきた取り組みや、資料保全の重要性について語る。写真公開と平和教育への貢献を目指して近く開設する特設ウェブサイトも披露する。

 平和研の四條知恵准教授は、被爆したろう者を対象に長崎で調査した経験を踏まえ、「語られない被爆体験証言」をテーマに報告する。原爆の記憶を伏せて一生を終えた人の歩みや、積極的に証言してきた人でも口にすることのなかった思いにまなざしを向け、被爆体験を多角的に理解する必要性を提示する。

 モデレーターとしてRECNAの山口響客員研究員・特定准教授が加わり討論する。シンポの進行役は平和研の竹本真希子准教授。

吉永小百合さん 朗読放映

原爆詩の3作品

 俳優の吉永小百合さんによる峠三吉「原爆詩集 序」などの朗読映像をシンポジウムの中で公開する。中国新聞創刊130周年記念企画。

 吉永さんはこれまでに、原爆症の青年との悲恋を描いた映画「愛と死の記録」、胎内被爆者の芸者を演じた「夢千代日記」などに出演。山田洋次監督作品の映画「母と暮せば」では、長崎原爆の犠牲になった息子の亡霊と語り合う助産師役を演じ、多くの人の胸を打った。

 そんな吉永さんのライフワークが原爆詩の朗読活動だ。「言葉」と「声」で紡ぐ体験継承の意味を、共に感じる機会となる。

視聴方法は2通り

 シンポジウムの視聴は二つの方法がある。オンライン会議システム「ズーム」で公開するほか、中国新聞ホール(広島市中区土橋町7の1)ではライブ映像の上映会もある。いずれも無料で、ズーム視聴の希望者は電子メール、上映会の申し込みは往復はがきでの事前申し込みが必要。

 上映会は新型コロナウイルス感染防止のため事前に中止を決め、ズーム視聴だけになる場合もある。その際は返信はがきでお知らせする。

(2022年6月14日朝刊掲載)

年別アーカイブ