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反核の弁護士 ヒロシマ記録 佐々木さん本出版 被爆者訴訟など解説

 広島で長年にわたって原爆症認定訴訟などに関わり、国際反核法律家協会(IALANA)共同代表も務める佐々木猛也弁護士(81)=東広島市=が「原爆 捨てられない記憶と記録」を日本評論社(東京)から出版した。被爆者裁判を支えた経験を軸に、原爆被害の実情や核兵器廃絶の取り組みを解説している。

 600ページ余り、全21章にわたる大部な一冊。被爆前の広島や原爆被害の実情、被爆者援護に関する法律や、被爆者が救済を求めた数々の訴訟の経過などを解説。自身の法曹活動の集大成であるとともに、原爆に関する歴史を整理した資料集でもある。

 佐々木さんの活動の原点は5歳の時。自宅のあった東広島で閃光(せんこう)を感じ、ごう音を聞いた。きのこ雲が目前に迫っているようだった。そんな記憶に付きまとわれるように原爆と向き合ってきた。京都大の学生時代には、舞台監督として広島で原爆芝居を上演した。

 大阪で弁護士になり、その後帰郷。1970年代に被爆者が原爆症認定を求めた「桑原訴訟」「石田訴訟」に加わった。2003年以降の原爆症認定集団訴訟やそれに続く「ノーモア・ヒバクシャ訴訟」で広島弁護団団長を務めてきた。

 法律家の立場から、核兵器廃絶運動にも力を注いできた。核兵器使用は国際法違反だと明確にすることを目指してIALANAが主導した「世界法廷運動」など、国際的な動きにもページを割いた。「広島・長崎を世界に伝えることは核兵器をなくすための第一歩」と佐々木さん。被爆者が一連の訴訟を通して明らかにした長年の苦しみこそが、世界法廷運動を経て実現した核兵器禁止条約の根幹をなす、との思いは強い。

 その条約の第1回締約国会議が、間もなくウィーンで始まる。「ロシアがウクライナに侵攻し核兵器使用の懸念が高まる今、被爆地そして日本の役割を真剣に考えなくては」と訴える。原爆を体験した世代が少なくなる中、「今後はどれだけ想像力を発揮できるかが問われる。その時に必要な記録としてこの本を活用してもらえたら」と話す。(森田裕美)

(2022年6月14日朝刊掲載)

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