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原爆特養 待機者が急増 5年で3倍 入居まで3年

■ 東海右佐衛門直柄

 広島市内にある原爆特別養護ホームの待機者数が5年間で約3倍に急増し、1500人を超えた。2007年に新施設が完成して全3園となり、定員合計は100人増の500人に拡大したものの、被爆者の高齢化を背景に入居待ちの状況は厳しくなるばかりだ。申請から入居まで3年前後はかかるという。

 原爆特養ホームは、広島県と市が1982年、東区に「神田山やすらぎ園」(定員100人)を、1992年には安佐北区に「倉掛のぞみ園」(300人)を開設し、広島原爆被爆者援護事業団が運営している。さらに2007年には社会福祉法人が安芸区に「矢野おりづる園」(100人)を開いた。

 市などによると、2004年3月末で519人だった待機者は増加を続け、今年4月末には1525人と定員の3倍を超えた。在宅介護が困難な被爆者が増えているほか、「同じ体験をした人たちと暮らす方が安心する」と一般特養からの転入を希望する被爆者も少なくないという。

 被爆者の平均年齢は75歳を超え、2008年度は約150人が待機中に亡くなった。市援護課は「病院など他の施設に入っている待機者も多く、全員が切迫した状況ではない」とみる。一方で2園を運営する事業団の鎌田七男理事長は「このままでは孤独死が増えかねない」と心配する。

 4園目の原爆特養の新設について県被爆者対策課は「国は在宅介護を重視しており難しい」と説明。本年度からは当面の対策として、入居を心待ちにする被爆者を対象に健康相談会を始める。

原爆特別養護ホーム
 被爆者援護法に基づき設置。被爆者健康手帳の所持者で①心身に著しい障害があるため常時介護を必要とし、在宅介護が困難な人②原爆小頭症患者で在宅介護が難しい人―を対象とする。施設整備費の3分の2、運営費の8割を国が負担している。広島市内3園への入所は、広島県内在住が条件。入所者は一般の特養と同じ居住費と食費を支払う。

(2009年6月19日朝刊掲載)

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