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連載・特集

緑地帯 丸古玲子 呉本こぼれ話⑤

 2023年に閉鎖する旧日新製鋼。ここにはかつて呉海軍工廠(こうしょう)があった。横須賀に続く2番目の鎮守府が置かれたのを機に、「帝国海軍第一ノ製造所」の期待を背負って一大工廠を形成。材料の鉄作りから完成品の軍艦・兵器まで純国産を目指し、達成した。戦後、旧軍港市転換法により高炉が建つ。高炉は呉の復興のシンボルであり、一方で公害のもとだった。決して分かち得ない歴史の表裏だ。

 私の呉の原風景は、この場所ではなかったか。ふるさと呉の色を思い浮かべる時、それは赤茶けている。煉瓦(れんが)からの連想ではない。私にとってそれは錆(さ)びた鉄だった。たぶん高烏山から眺めていた色。  呉ってラピュタだよなー。

 ジブリ映画「天空の城ラピュタ」のパズーの故郷スラッグ渓谷の鉱山の町を私は重ねる。シータを助けて走る機関車の線路を彷彿(ほうふつ)する。使いこまれて錆びていて、それでいて逞(たくま)しく、活気と人情の熱いあの町。呉はラピュタなんよ。

 海軍時代の造船技術を受け継ぐ地として呉が説明される背景の一つには、新しい艦艇の一番艦を造るのは呉だと暗黙に了解されていたことがあるのではないか。「リード・シップ」、つまり、先陣を切る艦は呉にあり。ありゃ、リーダーシップの語源はここ? と思って調べると、「リーダー(指導者)+シップ(人物化)」で、「艦」は関係なかった。まあ、いっか。

 過去リーダーシップを取った呉、これからもリーダーであれ。

 最後に。ラピュタの名ゼリフ「40秒で支度しな」の40はどこから来た数なのか、ご存じでしたら教えてください。(ライター=呉市出身)

(2022年6月16日朝刊掲載)

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