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被爆者の川本省三さん死去 反戦の願い 子どもたちへ

 原爆で家族を奪われ孤児となった経験を語り続けた被爆者の川本省三さん(88)=広島市西区=が亡くなった。証言活動などを通じて関わってきた人たちには悲しみが広がった。

 8日に亡くなった川本さんは毎年、学童疎開先だった善徳寺(三次市)を訪れ、子どもに寺での疎開生活や家族を失った体験を語っていた。長谷川憲章住職(53)は「口癖のように『いい大人になってください』『戦争はいけない』と語りかけていた。子どもたちに願いを託すような姿が印象に残っている」としのんだ。

 原爆資料館(中区)では証言やガイド活動の傍ら、証言を受け継ぐ被爆体験伝承者の育成にも注力した。元高校生平和大使で広島大医学部4年の井上つぐみさん(22)=安芸区=は伝承候補者の一人として聞き取りを重ねた。

「おじいちゃんと孫のように感じていた。若者の平和活動にも必ず協力してくれたのに感謝を伝えられていない」と悲しむ。川本さんの生前に原稿を完成できず、公式な伝承者としては活動できないが「若い世代の伝承に期待してくれていた。個人としてでも伝えていきたい」と誓っていた。(明知隼二)

(2022年6月16日朝刊掲載)

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