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軍縮・不拡散協議再開へ 岸田外相 イラン外相と確認

 岸田文雄外相(広島1区)は10日午後(日本時間10日夜)、イラン核問題をめぐり、同国の核交渉責任者であるザリフ外相とテヘランで会談した。2007年に途絶えた軍縮・不拡散分野での2国間協議の再開方針を確認。核問題の最終的な解決に向け、両国が努力を続けるとした共同声明を発表した。(テヘラン発 藤村潤平)

 ザリフ氏は、9日までスイス・ジュネーブであった核問題に関する欧米など6カ国との協議に出席。岸田氏は会談の冒頭、協議が結論を持ち越し20日から再開されるのを受け、「柔軟性を示し、結論が出ることを期待する」と述べた。

 会談後、両氏は記者会見。岸田氏は「核問題などで率直かつ有意義な意見交換をした」と強調。ザリフ氏も「岸田氏の訪問が良い影響を与えることを期待する」と語った。

 岸田氏は9日にロウハニ大統領と会談し、包括的核実験禁止条約(CTBT)批准や国際原子力機関(IAEA)の抜き打ち査察を可能にする追加議定書の履行などを促した。

 外相会談では、こうした課題を継続的に協議する場が必要との認識で一致。両国は局長級による協議を想定する。日本は協議の場などを通じ、イランの核問題をめぐる交渉をサポートする考えだ。

 共同声明の発表は外相クラスでは初めて。イラン核問題では「外交的取り組みを通じた早期解決の重要性」を共有した。6カ国との協議に取り組むロウハニ政権の姿勢やジュネーブでの進展を日本側が評価。イラン側も日本側が核問題で貢献することを「歓迎する」とした。

【解説】試される非核外交

 暗礁に乗り上げていたイランの核問題が大きく動くさなかでの岸田文雄外相のイラン訪問。外相会談で合意した軍縮・不拡散分野の2国間協議の再開で、被爆国日本も問題解決に向けて役割を果たすための一歩を踏み出す。日本の非核外交が試される。

 日本はこの協議の場を中心に、CTBT批准や、IAEAによる抜き打ち査察を可能にする追加議定書の履行をイランに促す。核問題をめぐる欧米など6カ国の交渉を後押しする意向だ。

 いずれもイランの核兵器開発疑惑を拭い去る取り組みだ。特にCTBTについては、批准を先送りする米国が求めても説得力はなく、日本の役割は大きい。

 イランも、友好的な関係にある日本の存在に期待を示す。欧米に融和姿勢を示すロウハニ政権が誕生したとはいえ、反米感情の強い保守強硬派が勢力を保つ。「米国には反発するが、日本の助言には耳を傾けてくれる。政権が動きやすくなる部分もある」(外務省関係者)からだ。

 ジュネーブでの核協議の結論は、次回以降に持ち越された。合意しても最終的な解決への道のりは長い。悲惨な結果しかもたらさない核兵器は持つべきではない―。イランの要人を被爆地に招き、心から感じてもらう。そんな働き掛けも日本にしかできないはずだ。(藤村潤平)

(2013年11月12日朝刊掲載)

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